「触れる・触られる」「動かす・動かされる」

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【この記事のまとめ】
能動的知覚(アクティヴタッチ)は触る行為、すなわち、随意的に自ら作り出す接触運動によって生じる感覚です。

一方、受動的触覚(触られる感覚)は、外界の何ものかによって刺激が与えられて生じる感覚です。

自分の意思で手を動かす時には、大脳皮質の一時運動野から筋肉を動かす指令信号が筋肉に伝わり、筋肉を収縮させます。

そして、手にある様々な感覚受容器が動きに応答し、その感覚情報が大脳皮質の一次体性感覚野に伝えられます。

この時、一次体性感覚野は、感覚受容器から実際の感覚信号を受け取る前に、一次運動野から未来の筋活動に関する事前情報を受け取っています。

一次体性感覚野は、筋活動に関しての事前情報と感覚受容器からの実際の感覚情報を統合していると考えられます。

運動時には自分の動きによって生まれる皮膚感覚などは抑制され、自己運動以外の要因で生まれる感覚は抑制せず、運動の安定性を維持するようにします。

感覚情報の脳への入り口である楔状束核で、脳は必要な感覚・不要な感覚を選択して取り込み(感覚ゲーティング)、身体運動の制御を実現しています。

 

私たちは、自分の手を誰かに動かされた時には、どのように動いているのかを簡単に知覚できます。

一方で、自分の意思で手を動かすような場合には、自分の手がどう動いたのかについては、意識を集中しないと知覚できません。

つまり、手や足を自分で動かした時と、何かに動かされた時とでは、受け取る感覚情報が大きく異なるのです。

能動的触知覚(触れる)と受動的触知覚(触られる)

「触れる・触られる」「動かす・動かされる」

能動的触知覚(アクティヴタッチ)の生理学

バイオメカニズム学会誌,Vol. 31, No. 4 (2007)

 

能動的触知覚(アクティヴタッチ)は、手で自由に触ることによって生じる知覚のことです。

能動的に手で外界を探索するときには、皮膚表在性の触・圧・痛、温度受容器だけでなく、手の動きにより深部にある筋肉、腱、関節などの深部受容器も興奮します。

深部受容器には、筋紡錘、腱器官、そして靭帯、関節包に存在する関節受容器などがあります。

 

能動的知覚(アクティヴタッチ)は触る行為、すなわち、随意的に自ら作り出す接触運動によって生じる感覚です。

一方、受動的触覚(触られる感覚)は、外界の何ものかによって刺激が与えられて生じる感覚です。

どちらの場合にも、皮膚と接触物との間に動きがある場合(動的:dynamic)と、ない場合(静的:static)とがあります。

動的アクティヴタッチは探索行為によって獲得される感覚であり、静的アクティヴタッチは対象を把持している場合に生じます。

 

手指の皮膚にある触覚受容器は 4 種類あり、SAI、SAII、FAI、FAII に分類されています。

刺激の続く限り継続する順応の遅いもの(SA:slow adapting)と、すぐやんでしまう順応の速いもの(RA:rapid adapting)の2種類があります。

Ⅰ型応答は、受容野が小さく境界が鮮明なのに対し、Ⅱ型応答は、受容野が大きく境界が不鮮明となります。

遅順応Ⅰ型(SAI)のメルケル細胞複合体、遅順応Ⅱ型(SAⅡ)のルフィ二小体、速順応Ⅰ型(RAⅠ)のマイスナー小体、速順応Ⅱ型(RAⅡ)のパチニ小体があります。

 

皮膚の触覚受容器については、関連記事をご参照ください ↓

「優しいタッチの神経伝達」触覚とメカノセンサー

パチニ小体については、関連記事をご参照ください ↓

「パチニ小体」振動と皮膚共鳴

 

対象と皮膚の間に動きのある動的タッチ(dynamic touch)では、動きのない静的タッチ(static touch)に比べ粗さ検出の閾値が半分になります。

静的タッチでは遅順応型の SAI、SAII だけが刺激されるのに対し、動的タッチでは速順応型の FAI、FAII をも刺激されます。

 

動かすと動かされる

「触れる・触られる」「動かす・動かされる」

The somatosensory cortex receives information about motor output

Sci Adv. 2019 Jul 10;5(7):eaaw5388.doi: 10.1126/sciadv.aaw5388

Motor planning brings human primary somatosensory cortex into action-specific preparatory states

Elife. 2022 Jan 12:11:e69517.doi: 10.7554/eLife.69517

Modulation of somatosensory signal transmission in the primate cuneate nucleus during voluntary hand movement

Cell Rep. 2024 Mar 26;43(3):113884. doi: 10.1016/j.celrep.2024.113884

 

自分の皮膚が何かに触れられたり、誰かに腕を動かされたりした時は、皮膚や関節にある様々な種類の感覚受容器が応答します。

多数の感覚受容器からの情報が、大脳皮質の一次体性感覚野に伝わり感覚統合されます。

それによって、一次体性感覚野の神経活動パターンは、触られ方や手足の動き方といった意味のある体性感覚の情報を持つようになります。

 

自分の意思で手を動かす時には、大脳皮質の一時運動野から筋肉を動かす指令信号が筋肉に伝わり、筋肉を収縮させます。

そして、手にある様々な感覚受容器が動きに応答し、その感覚情報が大脳皮質の一次体性感覚野に伝えられます。

 

一次運動野は、手足の動きに先立って活動し、その後に生じる筋収縮に関連した情報を持っています。

一次体性感覚野も筋収縮に関する情報を、筋肉が活動し始める前から持っていることがわかっています。

つまり、一次体性感覚野は、感覚受容器から実際の感覚信号を受け取る前に、一次運動野から未来の筋活動に関する事前情報を受け取っています。

一次体性感覚野は、筋活動に関しての事前情報と感覚受容器からの実際の感覚情報を統合していると考えられます。

 

多感覚統合については、関連記事をご参照ください ↓

多感覚統合とペリパーソナルスペース

 

運動計画とは、神経状態を理想的な準備点に導くことであり、運動前野や頭頂葉、一次運動野でも観察されています。

一次体性感覚野の運動計画における準備状態は、運動制御に関わっています。

運動に先立って筋紡錘システムを準備することにより、運動生成に積極的な役割を果たしている可能性があります。

 

筋紡錘については、関連記事をご参照ください ↓

「こむら返りと筋スパズム」筋肉の収縮弛緩のしくみ

 

また、次の感覚刺激の予測を反映している可能性があり、運動特有の感覚ゲーティングを可能にしていると考えられます。

感覚ゲーティングとは、脳が複数の感覚からの情報を処理する際に不要な情報を抑制し、有用な情報を選択的に処理するメカニズムです。

運動時には自分の動きによって生まれる皮膚感覚などは抑制され、自己運動以外の要因で生まれる感覚は抑制せず、運動の安定性を維持するようにします。

随意運動中には、一次体性感覚野の体性感覚と体性感覚誘発電位の両方が減少することがわかっています。

 

脳の中でも最初に末梢感覚信号を受け取る部位は、延髄の楔状束核です。

感覚情報の脳への入り口である楔状束核で、脳は必要な感覚・不要な感覚を選択して取り込み(感覚ゲーティング)、身体運動の制御を実現しています。

つまり、皮膚感覚などの体性感覚は、高次な情報処理を行う大脳皮質に伝達される前にすでに調節されており、膨大な感覚情報の中から有用な情報のみ取り込まれています。

 

まとめ

「触れる・触られる」「動かす・動かされる」

 

能動的知覚(アクティヴタッチ)は触る行為、すなわち、随意的に自ら作り出す接触運動によって生じる感覚です。

一方、受動的触覚(触られる感覚)は、外界の何ものかによって刺激が与えられて生じる感覚です。

対象と皮膚の間に動きのある動的タッチ(dynamic touch)では、動きのない静的タッチ(static touch)に比べ粗さ検出の閾値が半分になります。

静的タッチでは遅順応型の SAI、SAII だけが刺激されるのに対し、動的タッチでは速順応型の FAI、FAII をも刺激されます。

 

自分の意思で手を動かす時には、大脳皮質の一時運動野から筋肉を動かす指令信号が筋肉に伝わり、筋肉を収縮させます。

そして、手にある様々な感覚受容器が動きに応答し、その感覚情報が大脳皮質の一次体性感覚野に伝えられます。

この時、一次体性感覚野は、感覚受容器から実際の感覚信号を受け取る前に、一次運動野から未来の筋活動に関する事前情報を受け取っています。

一次体性感覚野は、筋活動に関しての事前情報と感覚受容器からの実際の感覚情報を統合していると考えられます。

 

運動時には自分の動きによって生まれる皮膚感覚などは抑制され、自己運動以外の要因で生まれる感覚は抑制せず、運動の安定性を維持するようにします。

感覚情報の脳への入り口である楔状束核で、脳は必要な感覚・不要な感覚を選択して取り込み(感覚ゲーティング)、身体運動の制御を実現しています。

 

「触れる・触られる」「動かす・動かされる」