環境力場の身体への影響「地球の自転とコリオリの力」
環境力学の身体への影響
私たちの身体は左右対称ではなく、ほとんどの場合が歪んで捻じれています。
体の使い方、よく使う利き手の影響などによって、身体が左右対称ではなくなります。
例えば、右利きの場合、左足重心となって体を支え、頸部は左側に側屈しやすく、右肩上がり、左骨盤が高くなって、骨盤は右回旋しやすくなったりします。
運動学習により神経可塑性が起こると同時に、それに合わせて体性感覚も変化しているのです。
学習による神経可塑性については、関連記事をご参照ください ↓
体の使い方など内部環境の要因だけでなく、外部環境の力学的影響によっても、身体の歪みの方向性はつくられています。
地球の表面にいる私たちは、重力や地球の自転の影響を常に受けています。
しかし、私たちの多くはそれを普段意識することはありません。
重力慣性場に合わせて体性感覚を統合して、ボディマッピング(身体地図)を持続的に保有しているからです。
ボディマッピングについては、関連記事をご参照ください ↓
重力場とメカノバイオロジーついては、関連記事をご参照ください ↓
コリオリの力とプレセッション(歳差)
地球の自転
地球の自転とは、地球が自身の地軸の周りを回転することです。
地軸は、地球が太陽の周りをまわる公転面に対して23.4度傾いており、日本がある北半球においては、北極星から見て反時計回りに自転しています。
地球の自転速度は、時速約 1,700 kmです。
昼と夜があることや、太陽や月が東からのぼって西に沈む現象は、地球が自転しているから起こっています。
地球の自転による概日リズム(サーカディアンリズム)については、関連記事をご参照ください ↓
コリオリの力(Coriolis force)
コリオリの力とは、回転座標系上で移動した際に、移動方向と垂直な方向に移動速度に比例した大きさで受ける慣性力の一種であり、転向力ともいわれています。
地球は東向きに自転しているため、低緯度の地点から高緯度の地点に向かって運動している物体には東向き、逆に高緯度の地点から低緯度の地点に向かって運動している物体には西向きの力が働きます。
自転の一周の距離は高緯度地点ほど短く、低緯度地点ほど長くなります。自転速度が異なるということです。
つまり、地球上の物体には東向きの力が加わっており、その力は高緯度地点では小さく、低緯度地点では大きくなっています。
物体が南北方向に運動する場合、高緯度地点から低緯度地点へ運動する時、東向きに加わる力が大きくなるのに対して、物体には静止しようする力が働きます。
逆に低緯度地点から高緯度地点へ運動する時、東向きに加わる力が小さくなるのに対して、物体は運動を続けようとする力が働きます。
これがコリオリの力であり、北半球では右向き(東向き)、南半球では左向き(西向き)に働くと言うこともできます。
コリオリの力による渦運動により、生命のホモキラリティーが作られたのではないかと考えられています。詳しくは関連記事をご参照ください ↓
プレセッション(歳差)運動
プレセッション(歳差)運動とは、自転している物体の回転軸が、円を描くように振れる現象のことです。首振り運動ともいわれています。
地球は1日1回自転しながら、1年で1回太陽の周りを公転しています。自転軸の向きは公転軌道面に対して垂直ではなく、約23.4度傾いています。
地球は完全な球体ではなく、赤道方向にややふくらんだ楕円体の形をしています。これに対して、太陽や月は公転面付近から引力を及ぼします。
地球の重心とそれ以外の点では、働く引力の大きさや向きが異なり、地球を引き伸ばそうとする力が働きます。
これによって、潮の満ち干が起こります。この潮汐力が偶力となって、自転軸を起こそうとする力が働きます。
このため、地軸は少しづつ向きを変えていきます。これを地球のプレセッション(歳差)運動といいます。
地球の表面にいる私たちにも、プレセッションが起こっています。
私たちは地球の自転による回転運動の影響を受けて、日本がある北半球では、鉛直軸を左回りに回転をしながら、鉛直線に直行して南北方向に接した線を軸として、東向きに回転します。
それによってプレセッションが発生して、常に北向きの力が作用することになります。
そのため北半球では北を向くと前屈がしやすくなり、南を向くと後屈がしやすくなります。
コリオリの力の変化とペリパーソナルスペース
Gradual exposure to Coriolis force induces sensorimotor adaptation with no change in peripersonal space
Sci Rep. 2022 Jan 18;12(1):922. doi: 10.1038/s41598-022-04961-1.
私たちの運動動作が行われる身体周囲の空間は、ペリパーソナルスペースとして定義されています。
私たちは、ペリパーソナルスペースで内受容感覚と外受容感覚を統合したものが、自己の経験として認識されるようになっています。
ペリパーソナルスペースは、身体と環境の間のインターフェースと考えることができ、そこには物体が到達でき、中枢神経系の基準として機能する可能性があります。
ペリパーソナルスペースについては、関連記事をご参照ください ↓
新しい環境力場に突然さらされると、ペリパーソナルスペースの表現が縮小することが知られています。
重力慣性力場の突然の変化に伴う大きな運動誤差の意識的な認識が、感覚運動システムの推定信頼性の低下につながります。
ペリパーソナルスペースは、行動の制御や外部の危険から身体を守る上で重要な役割を果たすため、運動エラーのリスクを最小限に抑え、感覚運動システムの効率を最大化する必要があります。
コリオリの力に徐々にさらされると、到達動作に体系的な残効が生じるが、到達推測の判断には大きな変化がでませんでした。
修正された重力慣性力場に徐々にさらされると、体系的な感覚運動適応は生じるが、ペリパーソナルスペースの表現には影響を及ぼさない結果となりました。
急激な力場の変化と、徐々にの力場の変化では、運動の適応による後遺症には大きな違いはありませんでした。
力場の緩やかな摂動の下では、大きな運動エラーという意識的な経験がなく、ペリパーソナルスペース表現の縮小という保守的な戦略を引き起こさないと考えられます。
まとめ
地球の表面にいる私たちは、重力や地球の自転の影響を常に受けていますが、私たちの多くはそれを普段意識することはありません。
体の使い方など内部環境の要因だけでなく、外部環境の力学的影響によっても、身体の歪みの方向性はつくられています。
重力慣性場に合わせて体性感覚を統合して、ボディマッピング(身体地図)を持続的に保有しているからです。
コリオリの力とは、回転座標系上で移動した際に、移動方向と垂直な方向に移動速度に比例した大きさで受ける慣性力の一種であり、転向力ともいわれています。
コリオリの力は、北半球では右向き(東向き)、南半球では左向き(西向き)に働いています。
プレセッション(歳差)運動とは、自転している物体の回転軸が、円を描くように振れる現象のことです。首振り運動ともいわれています。
私たちは地球の自転による回転運動の影響を受けて、北半球では鉛直軸を左回りに回転をしながら、鉛直線に直行して南北方向に接した線を軸として、東向きに回転します。それによって、プレセッションが発生して、常に北向きの力が作用することになります。
そのため北半球では北を向くと前屈がしやすくなり、南を向くと後屈がしやすくなります。
新しい重力慣性場への急激な変化と、徐々に変化する場合とでは、どちらも体系的な感覚運動適応は生じますが、ペリパーソナルスペースの表現に与える影響が異なります。