なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

【この記事のまとめ】
運動連鎖によって、体のある関節の動きは、離れた関節まで影響が及んでいます。

関節が拘縮して可動域制限があったり、筋力が低下して関節がうまく動かせない場合、運動連鎖がうまく波及しなくなります。

運動連鎖が破綻すると、日常動作で一部の関節に強度に負担がかかるようになります。

姿勢を安定させるために、代償的に使える筋肉を使って姿勢制御を行うようになります。

関節の可動域制限が生じた状態や、関節に力が入らず不安定な状態で動かしていると、クッションの役目をする軟骨に過度な負担がかかります。

軟骨の変形や摩耗による消失が起こることで、骨同士がこすれ合い、骨棘を形成して変形へとつながっていきます。

血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり、痛みを感じやすくなります。

痛みを感じやすくなると、可動域制限が増悪してさらに動かしにくくなります。

 

私たちの体の関節はつながっていて、連動して動くようになっています。

関節の拘縮や関節を支える筋肉がうまく動かなくなると、日常動作である一部の関節に強度に負担がかかるようになります。

変形性関節症は、年齢とともに増加しています。

特に体重を支える膝関節・股関節、腰椎に症状が出ると、日常生活に支障が出やすくなります。

フレイルを引き起こす原因となります。

 

フレイル・サルコペニアについては、関連記事をご参照ください ↓

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

運動連鎖と姿勢

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

 

運動連鎖とは

運動連鎖とは、ある関節で起きた運動の影響が、隣接関節に連鎖して波及することです。

つまり体の一部の関節の動きは、離れた関節まで影響が及んでいます。

体の一部の関節がうまく動かなくなると、離れた関節の動きにも影響を与えてしまいます。

 

下肢における運動連鎖は、骨盤から足部へと遠位に波及する運動連鎖(下行性運動連鎖)と、足部から骨盤へと近位に波及する運動連鎖(上行性運動連鎖)があります。

下行性運動連鎖

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

下行性運動連鎖は、骨盤から足関節の方向に向かって影響を及ぼします。

腰がそって骨盤が前に傾くことを前傾、腰が丸まって骨盤が後ろに傾くことを後傾といいます。

骨盤の前傾と後傾によって、運動連鎖が変わってきます。

骨盤が前傾すると、足はX脚のように内股になって、足首は内側にねじれます。

骨盤が後傾することで、膝はガニ股のようになり外側へ向き、足首は外側にねじれます

 

上行性運動連鎖

上行性運動連鎖は、足関節の動きが膝関節や股関節、骨盤へと影響を及ぼします。

足関節の動きには回内や回外があり、この動きによって運動連鎖が起こります。

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

 

関節が拘縮して可動域制限があったり、筋力が低下して関節がうまく動かせない場合、運動連鎖はうまく波及しなくなります。

運動連鎖が破綻すると、日常動作で一部の関節に強度に負担がかかるようになります。

姿勢を安定させるために、代償的に使える筋肉を使って姿勢制御を行うようになります。

 

姿勢を保持するために、体の力が抜けない原因の一つとなります。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

「正しい姿勢」体の力を抜けない人が多い

例えば、

膝関痛の場合、膝関節の拘縮だけでなく、骨盤や股関節、足関節にも原因がある可能性が高くなります。

股関節痛の場合、股関節の拘縮だけでなく、骨盤や膝関節、足関節にも原因がある可能性が高くなります。

 

関節が拘縮する原因はファシアの癒着があります。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

筋膜性疼痛症候群とファシアリリース

創傷からの癒着「フィブリンとコラーゲン」

関節の動きが不安定になる原因

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

 

関節を安定して正しく動かすために、いくつかの筋肉が働いています。

それらの筋肉のうち、使いにくい筋肉がでてくると、使える筋肉を働かせてカバーするようになります。

 

私たちは体を動かすときの癖がでてきます。

動かしやすい筋肉を無意識に多く使うようになって、使いにくい筋肉は使わなくなっていくのです。

そうやって使える筋肉だけを使って動かし続けていると、関節が不安定になって正しい動きができなくなって、負荷がかかりやすくなります。

うまく関節の運動連鎖ができなくなって、日常的な立つ・座るなどの動作でさえも、関節に負担がかかるようになってしまうのです。

 

膝関節を安定して動かす筋肉に、大腿の内側の内転筋と、大腿の後ろ側の内側ハムストリングスがあります。

膝を曲げる内側ハムストリングスが弱くなって使えなくなると、膝が外側へねじれやすくなって、膝関節が正しい動きをしにくくなります。

ではどうして、内側ハムストリングスが動かせなくなるかというと、足関節や股関節の動きが悪くなっていることが原因だったりします。

関節を安定させて正しい動きをさせるためには、うまく使えなくなっている筋肉を意識的に動かして使えるようにすることが大切です。

 

筋肉を使わなくなって動かせなくなると、ファシアは硬化して拘縮が起こりやすくなります。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

「筋膜リリース」コラーゲン線維の可塑性

変形性関節症(Osteoarthritis:OA)

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

 

関節表面を覆う関節軟骨は、軟骨細胞と2型コラーゲンとプロテオグリカン(糖タンパク)が主成分で、たくさんの水分を保持して衝撃吸収機能や潤滑機能を果たしています。

関節軟骨自体には、血管・リンパ管・神経は存在せず、滑液によって栄養されています。

 

関節の可動域制限が生じた状態や、関節に力が入らず不安定な状態で動かしていると、クッションの役目をする軟骨に過度な負担がかかります。

軟骨の変形や摩耗による消失が起こることで、骨同士がこすれ合い、骨棘を形成して変形へとつながっていきます。

そして、関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発していきます。

血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり、痛みを感じやすくなります。

つまり疼痛閾値の低下が起こります。

痛みを感じやすくなると、可動域制限が増悪してさらに動かしにくくなります。

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

関節の中では特に体重の負荷がかかる荷重関節である、膝関節・股関節などの関節症が問題になるケースが多いです。

膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨からできています。

一般的には大腿骨と脛骨の関節に起こる変形性関節症(OA)を変形性膝関節症(膝OA)といいます。

中でも内側の軟骨が減ってしまう内側型OAが多く、O脚変形を伴ないガニ股のような状態になっていることが多いです。

まとめ

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」

 

運動連鎖によって、体のある関節の動きは、離れた関節まで影響が及んでいます。

関節が拘縮して可動域制限があったり、筋力が低下して関節がうまく動かせない場合、運動連鎖がうまく波及しなくなります。

運動連鎖が破綻すると、日常動作で一部の関節に強度に負担がかかるようになります。

姿勢を安定させるために、代償的に使える筋肉を使って姿勢制御を行うようになります。

 

私たちは体を動かすときの癖がでてきます。

動かしやすい筋肉を無意識に多く使うようになって、使いにくい筋肉は使わなくなっていくのです。

そうやって使える筋肉だけを使って動かし続けていると、関節が不安定になって正しい動きができなくなって、負荷がかかりやすくなります。

関節の可動域制限が生じた状態や、関節に力が入らず不安定な状態で動かしていると、クッションの役目をする軟骨に過度な負担がかかります。

軟骨の変形や摩耗による消失が起こることで、骨同士がこすれ合い、骨棘を形成して変形へとつながっていきます。

血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり、痛みを感じやすくなります。

痛みを感じやすくなると、可動域制限が増悪してさらに動かしにくくなります。

 

なぜ関節痛が起こるのか?「運動連鎖と変形性関節症」