フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

【この記事のまとめ】
身体的フレイルの最大の要因の 1 つに、ミトコンドリアの機能不全による筋肉の萎縮があります。

ミトコンドリア機能障害が、サルコペニアの進行や廃用症候群にも大きく関連しています。

運動はミトコンドリアの品質管理を維持し、ミトコンドリア関連アポトーシスを阻害することにより、筋肉機能と筋肉量の低下を軽減し、ミトコンドリア機能を改善します。

 

これから超高齢化社会を迎える日本では、健康寿命の延伸対策としてフレイル予防が重要となっています。

ところがコロナ禍になってから、家の中にいることが多くなって、外出機会が減少しているのではないでしょうか。

活動量が低下することで、体の筋力が衰えて疲れやすくなったりします。

また社会とのつながりが希薄になって、意欲の低下や精神的な不安もでやすくなります。

 

フレイルとは

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

 

フレイルとは、Frailty(虚弱)が語源となっており、加齢によって心身が老い衰え、社会とのつながりが減少した状態のことです。

健康と要介護との間の状態であり、可逆的で適切な介入をすれば元に戻せる状態と考えられています。

フレイルには多面的な要因があり、「身体的フレイル」・「心理的・認知的フレイル」・「社会的フレイル」の3つがあります。

それらの要因が負のサイクルとなって進行していくと考えられています。

そのまま放置すると介護が必要な状態になる可能性が高く、適切な予防・改善をしていくことが大切です。

 

また、筋力が衰え始めるのは40代からと言われ、フレイルの前段階を「プレフレイル」と呼んでいます。

特にコロナ禍になってから、在宅ワークや外出自粛が続いているため、自然と筋力低下につながりやすくなっています。

「身体的フレイル」が起こる要因として、サルコペニアや廃用症候群などがあります。

 

軽度認知障害(Mild cognitive impairment:MCI)

軽度認知障害(MCI)とは、通常の加齢よりも認知機能低下が進んだ状態で、現状では認知症と診断されるほどではなく、日常生活に困難をきたす程度でもありません。

認知症の前段階であり、健常状態と認知症の中間であるといわれることが多いです。

ある一定の割合で正常な認知機能に戻る場合があり、認知症予防を目指した取り組みにおいて非常に重要な対象であると位置づけられています。

まさにMCIは「認知的フレイル」の状態だといえます。

 

生活習慣病である認知症については、関連記事をご参照ください ↓

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人や社会とのつながりが希薄になる「社会的フレイル」によって、意欲の低下や精神的な不安がでやすくなります。

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サルコペニアにおける運動とミトコンドリアの関係

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

Role of Age-Related Mitochondrial Dysfunction in Sarcopenia

Int J Mol Sci. 2020 Jul 23;21(15):5236. doi: 10.3390/ijms21155236.

 

骨格筋量と機能の低下は、老化の最も顕著な現れの1つです。

一般的には筋肉量は 30 歳から 40 歳の間にピークに達し、その後減少し始めていきます。

加齢による正常な現象と考えられていますが、身体的に不活発な人や、急性または慢性の状態で急速に進行する可能性もあります。

特に非活動的なライフスタイルを持つ人々では、筋肉量の損失は、50 歳から 60 歳までで年に 1% から 2% に達し、それ以上の年齢では年に 3% から 5% に達する可能性があります。

 

サルコペニア(sarcopenia)

サルコペニアとは、加齢による骨格筋量の低下と定義され、広い意味では筋力低下や身体機能低下が含まれています。

 

ミトコンドリアは細胞小器官(オルガネラ)であり、酸化的リン酸化(OXPHOS)によるATP(エネルギー)産生する大きな役割を担っています。

ミトコンドリアの分裂、融合、増殖は、ミトコンドリアダイナミクスと呼ばれ、マイトファジーによるミトコンドリアの品質管理とも大きな関係があります。

活性酸素種(ROS)によって障害されて機能不全になったミトコンドリアを除去したり、細胞のアポトーシスにも関与しています。

ROS レベルの上昇とミトコンドリア膜電位の喪失は、ミトコンドリアの分裂を引き起こしてマイトファジーを活性化します。

 

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フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

 

骨格筋には、その正常な機能に必要なエネルギーを生成するためのミトコンドリアが非常に豊富に存在します。

ミトコンドリア機能障害が、サルコペニアの進行と関連していることがわかっています。

蓄積された ROS は、ミトコンドリア膜の透過性を高め、ミトコンドリア内膜 (シトクロム c など)内のタンパク質の放出を促進して、ミトコンドリア関連のアポトーシスを引き起こします 。

ミトコンドリア関連のアポトーシスが、加齢によるミトコンドリア機能障害における骨格筋繊維の損失を媒介することにより、サルコペニアの主な要因になる可能性があります。

運動はミトコンドリアの品質管理を維持し、ミトコンドリア関連アポトーシスを阻害することにより、筋肉機能と筋肉量の低下を軽減し、ミトコンドリア機能を改善します。

 

廃用症候群

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

 

廃用症候群

廃用症候群とは、過度な安静や活動量の低下によって生じた身体機能の変化のことで、筋肉が萎縮して筋肉量が低下します。

 

骨折により長期間ギプスで固定したり、脳梗塞後で手足が麻痺して動かせなくなったり、疼痛により特定の筋肉群の使用を避けるようになるといった場合など、筋肉を動かさなくなった特定の部位に発症します
また、座りっぱなしの生活で歩行などの普段の活動をしなくなり、足の筋肉を使わない場合にも、発生することがあります。

 

不動による筋膜(細胞外マトリックス)の剛性は、筋肉の細胞骨格の張力を増加させて、ミトコンドリアダイナミクスに影響を与えて断片化を引き起こします。

 

不動による筋膜の剛性については、関連記事をご参照ください ↓

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細胞外マトリックスとミトコンドリアダイナミクスの関係については、関連記事をご参照ください ↓

「力学と代謝」細胞外マトリックスとミトコンドリアダイナミクス

細胞外マトリックス (ECM) の剛性が、アクチンと呼ばれる繊維状細胞タンパク質の再編成を促進して、グルコースからエネルギーを生成する重要な代謝経路である解糖系を促進します。

不動による筋膜(細胞外マトリックス)の剛性は、解糖系の代謝を活性し、ミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)を阻害して、ミトコンドリア機能を低下させます。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

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まとめ

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

 

骨格筋には、その正常な機能に必要なエネルギーを生成するためのミトコンドリアが非常に豊富に存在します。

身体的フレイルの最大の要因の 1 つに、ミトコンドリアの機能不全による筋肉の萎縮があります。

ミトコンドリア機能障害が、身体的フレイルの原因となるサルコペニアの進行や廃用症候群にも大きく関連しています。

運動はミトコンドリアの品質管理を維持し、ミトコンドリア関連アポトーシスを阻害することにより、筋肉機能と筋肉量の低下を軽減し、ミトコンドリア機能を改善します。

 

 

ミトコンドリア機能は運動だけでなく呼吸や食事の影響も大きく受けています。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

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