筋膜性疼痛症候群とファシアリリース
近年、痛みの発生源となる部位として、ファシア(fascia)が注目されています。
痛みを発生しているファシアは、エコー(超音波画像診断装置)で観察すると白く重積した像を確認することができます。
この重積したファシアに、生理食塩水を注入すると、痛みの緩和や関節可動域の改善が得られる場合があります。
これはハイドロリリースと呼ばれ、注目されている治療法の一つです。
徒手療法によるファシアリリースとは、どういうものがあるのでしょうか。
ファシア(fascia)とは
ファシア(fascia)とは
ファシアは筋膜(Myofascia) に加えて骨、腱、靱帯、脂肪、内臓を包む膜など、骨格筋と無関係な部位の結合組織を含んだ概念です。
細胞外マトリックスと呼ばれる結合組織のことです。
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筋膜性疼痛症候群(Myofascial pain syndorome: MPS)
炎症や虚血が生じた領域において、ファシアおよびファシア周囲に、なんらかの力学的あるいは電気生理学的変化が起こることで疼痛が生じると考えられています。
筋膜(Myofascia)には多くの感覚神経が存在して、固有受容器と侵害受容器があります。
筋膜性疼痛症候群(MPS)では、異常なファシアでの組織の伸張性低下と組織間の滑走性の低下が起こっています。
可動域制限などの症状を引き起こし、侵害受容器など痛みのセンサーが高密度に分布するようになると、トリガーポイントと呼ばれるように過敏になります。
また水分量の低下が起こって、ヒアルロン酸の粘度の上昇があります。
ファシアの神経支配と固有受容器・侵害受容器については、関連記事をご参照ください ↓
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ファシアの異常
ファシア(fascia)の重積像は、エコー画像において帯状の高輝度(白く)に観察される傾向があります。
この投影像は、水分量の減少、または線維構造の高密度化などの病態を反映してると考えられています。
ファシアの癒着(adhesion)・凝集(cohesion)によって、組織の伸張性の低下、組織間の滑走性の低下が起こっていると考えられます。
癒着や凝集の原因は、炎症の修復過程でできたフィブリンがうまく除去されずに沈着することで起こってしまいます。
ファシアの癒着とフィブリンについては、関連記事をご参照ください ↓
ファシアの凝集による高密度化は、不動や糖化・活性酸素によるコラーゲンの老化架橋によっても起こります。
コラーゲン線維の老化架橋(ランダム架橋)については、関連記事をご参照ください ↓
ファシアの癒着・凝集によって、組織の伸張性や組織間の滑走性が低下すると、局所病態として疼痛閾値の低下が起こってきます。
pHの低下、炎症や血流減少、疼痛物質の局所濃度の増加、末梢神経の過敏性などが考えられます。
結合組織であるファシアの力学的(張力)な変化は、細胞の代謝に大きな影響を与えています。
ファシアの張力と細胞の代謝については、関連記事をご参照ください ↓
徒手療法によるファシアリリース(fascia release)
ファシアリリースとは、凝集して高密度化したファシアをリリース(release)することです。
癒着した組織間を剥離して、凝集したファシアを緩めることで、滑走性を改善します。
徒手療法によるファシアリリース
一般的に筋膜リリースと呼ばれている徒手療法は、表層部の筋膜をリリースするものがほとんどです。
深層部の筋膜や骨膜など、深部の可動制限の大きな問題となっている部位へのアプローチは特殊な技法が必要となります。
六層連動操法
六層連動操法は骨をテコにして筋膜や骨膜などのファシアにテンションをかけて、深層部の筋膜や骨膜の癒着をリリースする特殊技法です。
コラーゲン線維やフィブリン線維は、非線形弾性の性質を示すことがわかっています。
的確なベクトル(方向)に、粘性変形を引き起こす力(テンション)を持続的にかけることによって、可動制限となっていたファシアをリリースすることが可能です。
まとめ
筋膜性疼痛症候群(MPS)は、炎症や虚血が生じた領域において、ファシアおよびファシア周囲に、なんらかの力学的あるいは電気生理学的変化が起こることで疼痛が生じると考えられています。
筋膜性疼痛症候群では、異常なファシアでの組織の伸張性低下と組織間の滑走性の低下が起こっています。
また水分量の低下が起こって、ヒアルロン酸の粘度の上昇があります。
ファシアの癒着・凝集によって、組織の伸張性や組織間の滑走性が低下すると、局所で疼痛閾値の低下が起こってきます。
結合組織であるファシアの力学的(張力)な変化は、細胞の代謝に大きな影響を与えています。
六層連動操法は骨をテコにして筋膜や骨膜などのファシアにテンションをかけて、深層部の筋膜や骨膜の癒着をリリースする特殊技法です。