ファシア(筋膜)のつながり

ファシア(筋膜)のつながり

「優しいタッチの神経伝達」触覚とメカノセンサー

【この記事のまとめ】
ファシアは、加えられたストレスに応じて緊張状態を修正しており体全体に広がるバイオテンセグリティのネットワークの一部と見なされます 。

バイオテンセグリティのシステムでは、人間の動きが発生すると、この動きの間に筋骨格系全体が絶えず調整され全体的なパターンが発生します。

長期間による姿勢の歪みは、筋膜の張力がパターン化されてしまい、骨を調節しても長持ちしません。

制限された筋膜があると、その結果、筋収縮に伴う力線が変更されます 。

これらの生体力学的変化は、筋力の低下、協調運動障害、痛みまたは固有受容機能障害を引き起こします。

体全体の骨格筋は、いくつかの特定のパターンを持つネットワークを形成する筋膜組織によって、互いに間接的にリンクされています。

これらのパターンは、筋膜経線(myofascial meridians)と名付けられ、12の筋膜経線が特定されています。

筋活動の変化に対する反応として、特定の経路に沿って張力の伝達が起こります。

 

Role of fascial connectivity in musculoskeletal dysfunctions: A narrative review

J Bodyw Mov Ther. 2020 Oct;24(4):423-431. doi: 10.1016/j.jbmt.2020.07.020.

ファシア(筋膜)の役割

ファシア(筋膜)のつながり

 

ファシア(fascia)は、人体を支え保護して、密接に相互に”つながり”を持っています。

発生学的観点から、ファシアは中胚葉に由来します(一部は外肺葉である頭蓋および頸部領域の神経堤から発達した組織に部分的に見られることがあります)。

筋膜(myofascia)だけでなく骨、腱、靭帯、内臓など結合組織を包む固体ファシアと、血液やリンパ液などの液体ファシアがあります。

 

液体ファシアについては、関連記事をご参照ください ↓

液体ファシア(liquid fascia)の役割と流体力学

 

ファシアは加えられたストレスに応じて緊張状態を修正しており、体全体に広がるバイオテンセグリティのネットワークの一部と見なされます 。

 

テンセグリティやバイオテンセグリティについては、関連記事をご参照ください ↓

「テンセグリティー」ホメオスタシスのかたち

 

メカノトランスダクション(物理的な力を細胞内の生化学的応答に変換すること)を通じて、これらの力が細胞レベルで伝達され、線維芽細胞の遺伝子発現に変化をもたらし、それによって細胞外マトリックスの組成が変化する可能性があります。

 

メカノトランスダクションについては、関連記事をご参照ください ↓

メカノバイオロジー「重力と張力」

「力学と代謝」細胞外マトリックスとミトコンドリア

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線維芽細胞の機械的緊張が繰り返されると、炎症性メディエーターが分泌されることもあります。

こうして筋骨格系に必要な力の伝達や、滑走などの日常的な機能に影響を与えています。

機能不全が起こると、ファシアは神経支配されていることから、痛みや固有受容機能の問題につながる可能性があります。

 

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神経のつながりと痛み、固有受容については関連記事を参照ください ↓

神経のつながり「なぜ痛みが起こるのか?」

ファシア(筋膜)の接続と連続性

ファシア(筋膜)のつながり

 

これまで私たち人間の動きの研究の多くは、還元主義的に行われてきました。

部分的な動きに分解され、個々に細かく分析してきた結果、人体の筋肉は、ある骨を別の骨に単に接続するだけの独立した解剖学的構造と見なされてきました。

しかし、還元主義のアプローチは、絡み合った複雑さと、人間の動きなどの複雑なシステムに見られる多様なダイナミクス(動的に連動した動き)を捉えることはできません。

人間の動きを全体論的に理解するために、バイオテンセグリティを中心に考えることが重要となります。

バイオテンセグリティのシステムでは、人間の動きが発生すると、この動きの間に筋骨格系全体が絶えず調整され全体的なパターンが発生します。

 

還元主義や全体論については、関連記事をご参照ください ↓

「要素還元主義による単一病因論」ピロリ菌は胃癌の原因なのか?

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骨格系の骨は、張力に依存して多数の静止筋緊張によって保持されています。

筋膜の張力がバランスのとれたものになれば、骨は軽い状態で体の中で浮かんでいられます。

重力に負けずに、体を軽く感じることができるのです。

 

正しい姿勢については、関連記事をご参照ください ↓

「正しい姿勢」体の力を抜けない人が多い

 

長期間による姿勢の歪みは、筋膜の張力がパターン化されてしまい、骨を調節しても長持ちしません。

制限された筋膜があると、その結果、筋収縮に伴う力線が変更されます 。

これらの生体力学的変化は、筋力の低下、協調運動障害、痛みまたは固有受容機能障害を引き起こします。

したがって筋骨格系に影響を与える障害の治療は、この筋膜ネットワークに焦点を当てる必要があります。

 

筋膜リリースについては、関連記事をご参照ください ↓

「筋膜リリース」コラーゲン線維の可塑性

「筋膜リリース」ヒアルロン酸の特性とコラーゲン線維の粘弾性

 

体全体の骨格筋は、いくつかの特定のパターンを持つネットワークを形成する筋膜組織によって、互いに間接的にリンクされています。

これらの概念的なパターンは、筋膜経線(myofascial meridians)と名付けられました。

 

筋活動の変化に対する反応として、特定の経路に沿って張力の伝達が起こります。

 

筋膜経線(myofasia meridians)

ファシア(筋膜)のつながり

 

「筋膜経線」は、トム・マイヤーズによる造語です。

筋膜は、体の構造全体に緊張を分散させ、動きを促進し、安定性を提供する特定のパターン(張力線)に組織化されています。

体内で 2 つ以上の離れた構造が、互いにどのように影響し合っているかを考察するのに非常に役立ちます。

 

マイヤーズは体全体の12の筋膜経線を特定しています。

 

Superficial Back Line (SBL)

Superficial Front Line (SFL)

Lateral Line (LL)

Spiral Line (SL)

Superficial Front Arm Line (SFAL)

Deep Back Arm Line (DBAL)

Deep Front Arm Line (DFAL)

Superficial Back Arm Line (SBAL)

Back Functional Line (BFL)

Front Functional Line (FFL)

Ipsilateral Functional Line (IFL)

Deep Front Line (DFL)

 

まとめ

ファシア(筋膜)のつながり

 

ファシアは加えられたストレスに応じて緊張状態を修正しており、体全体に広がるバイオテンセグリティのネットワークの一部と見なされます 。

バイオテンセグリティのシステムでは、人間の動きが発生すると、この動きの間に筋骨格系全体が絶えず調整され全体的なパターンが発生します。

長期間による姿勢の歪みは、筋膜の張力がパターン化されてしまい、骨を調節しても長持ちしません。

制限された筋膜があると、その結果、筋収縮に伴う力線が変更されます 。

これらの生体力学的変化は、筋力の低下、協調運動障害、痛みまたは固有受容機能障害を引き起こします。

 

体全体の骨格筋は、いくつかの特定のパターンを持つネットワークを形成する筋膜組織によって、互いに間接的にリンクされています。

これらの概念的なパターンは、筋膜経線(myofascial meridians)と名付けられ、12の筋膜経線が特定されています。

筋活動の変化に対する反応として、特定の経路に沿って張力の伝達が起こります。

 

「優しいタッチの神経伝達」触覚とメカノセンサー