ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

【この記事のまとめ】
コロナ後遺症(long-COVID)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染後、数ヵ月以上も様々な症状が続きます。

コロナ後遺症は、急性の SARS-CoV-2 感染とは病因が異なる可能性があります。

コロナ後遺症が起こる要因は、肥満による脂肪蓄積がインスリン抵抗性など代謝機能障害を引き起こし、ベースとして炎症の亢進(慢性炎症)があると考えられます。

代謝機能障害によるミトコンドリアのエネルギー産生の低下によって、ウイルス感染直後に起こる急性炎症反応が抑えられます。

ウイルス感染によるPAMPsによる急性炎症反応が十分に完結することができずに、ウイルスの持続性や慢性炎症によるコロナ後遺症が長引いていると考えられます。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)での後遺症が問題になっています。

コロナ後遺症だけでなく、ワクチン接種後の後遺症についても、取り上げられるようになってきました。

後遺症が起こる場合と起こらない場合で、いったい何が違うのでしょうか。

 

コロナ後遺症/long-COVID

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

 

コロナ後遺症(long-COVID)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が検出されなくなった後も、体調不良が数ヵ月以上続きます。

感染症と同じ症状が続いたり、新たに症状が出現したりして、コロナ後遺症として様々な症状が報告されています。

後遺症の主な症状は、疲労倦怠感、関節痛・筋肉痛、慢性咳嗽・息切れ、胸痛、不眠・不安・うつ、頭痛、集中力低下、味覚・嗅覚の障害、耳鳴り・めまい、胃腸障害など多岐にわたります。

また、コロナ後遺症はコロナ感染症(COVID-19)が軽症であった人にも起こっています。

 

ウイルス感染をきっかけに疲労感が続くような症状は、以前からウイルス感染後疲労症候群(慢性疲労症候群)として知られており、コロナ後遺症もまたその一つと考えられます。

 

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome:CFS)とは

これまで健康に生活していた人が、ある日突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降強い疲労感と共に、微熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、脱力感、思考力の障害、抑うつ症状などが長期にわたって続く疾患です。

一般的な慢性疲労とは全く異なる状態であり、睡眠によって回復しないため日常生活が困難になり、健全な社会生活が送れなくなります。

発熱などの風邪症状に続いて発症する例が多く、感染症の原因となるウイルスや細菌との関連は、以前から考えられていました。

 

炎症反応のメカニズム

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

 

炎症反応は私たちの体を守る生体防御反応であり、細胞や組織の恒常性を維持する働きによって起こっています。

異物や死んでしまった自分の細胞を排除して、生体の恒常性を維持しようという反応と考えられます。

私たちの体には、Danger Signal を認識するセンサーが存在しており、PRRs (pattern-recognition receptors:パターン認識受容体)といわれています。

 

炎症反応を誘発する Danger Signal には大きく2種類あります。

1つは、外から入ってきた異物である細菌やウイルスなどの構成成分(表面のタンパク質)、PAMPs(pathogen-associated molecular patterns:病原体関連分子パターン)といわれます。

もう一つは、自分の細胞が壊れたときに放出される分子で、DAMPs(damage-associated molecular patterns:傷害関連分子パターン)といわれます。

 

細菌やウイルスなど異物が体の中に侵入しようとした時、PAMPsが急性炎症を引き起こしますが、異物が排除されて、炎症のピークが過ぎると数日で収束していきます。

しかし、長期にわたって慢性的に炎症反応が続く場合には、DAMPsによる慢性炎症が引き起こされています。

コロナ後遺症など、数ヵ月にも渡って長期に症状が続くような場合には、ウイルスによるPAMPsではなく、DAMPsによる慢性炎症が大きな影響を与えていると考えられます。

 

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コロナ後遺症と代謝機能障害

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

Post-acute sequelae of COVID-19: A metabolic perspective

Elife. 2022 Mar 23;11:e78200. doi: 10.7554/eLife.78200.

 

コロナ後遺症は、急性の SARS-CoV-2 感染とは病因が異なる可能性があり、特にウイルスの持続性と脂肪蓄積または他の場所での慢性炎症が症状を長引かせる根本的なリスクとなります。

代謝機能障害 (肥満、インスリン抵抗性、糖尿病)は、重度の急性 COVID-19 の危険因子であり、この因子と慢性炎症状態がコロナ後遺症の要因となっています。

 

ヒト脂肪組織におけるSARS-CoV-2 ウイルスの持続性が報告されています。

肥満や2型糖尿病など代謝機能障害があると、ベースランインでの炎症の亢進(慢性炎症)が考えられます。

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脂肪滴の拡大による脂肪細胞の機能不全は、異所性脂質の蓄積と、炎症を引き起こす脂質シグナル伝達因子の放出につながり、インスリン抵抗性を引き起こします。

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また、COVID-19後に2型糖尿病を発症する頻度が増加するなど、耐糖能障害を新たに発症する可能性があります。

T細胞は、抗体とサイトカインの産生を助けることにより、ウイルス感染に対する急性および慢性の反応において主要な役割を果たします。

2型糖尿病および肥満では、T 細胞の機能不全と異常なサイトカイン産生が発生し、感染の重症度と SARS-CoV-2 からの完全な回復までの時間の長さに影響を与えています。

 

肥満やインスリン抵抗性・2型糖尿病など、ミトコンドリアのエネルギー代謝の低下が起こると、ウイルス感染直後に起こる急性炎症反応が抑えられます

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まとめ

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」

 

コロナ後遺症(long-COVID)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染後、数ヵ月以上も様々な症状が続きます。

コロナ後遺症は、急性の SARS-CoV-2 感染とは病因が異なる可能性があります。

コロナ後遺症が起こる要因は、肥満による脂肪蓄積がインスリン抵抗性など代謝機能障害を引き起こし、ベースとして炎症の亢進(慢性炎症)があると考えられます。

代謝機能障害によるミトコンドリアのエネルギー産生の低下によって、ウイルス感染直後に起こる急性炎症反応が抑えられます。

ウイルス感染によるPAMPsによる急性炎症反応が十分に完結することができずに、ウイルスの持続性や慢性炎症によるコロナ後遺症が長引いていると考えられます。

 

ウイルス感染と慢性炎症「コロナ後遺症とは」