細胞外電場とエファプティック・カップリング

細胞外電場とエファプティック・カップリング

細胞外電場とエファプティック・カップリング

【この記事のまとめ】
ニューロンは活動電位と呼ばれる電気パルスを生成して伝播し、シナプス末端に到着すると消滅します。その時、局所的な放電を引き起こして、細胞外電場を生成します。

この内因性の細胞外電場は、「エファプティック・カップリング」と呼ばれる、”非シナプス性のつながり”をつくります。

神経活動の電位が生み出した微弱な電場が、細胞外スペースを拡がって、他の神経の電気活動を刺激することで信号を伝えています。

てんかん様活動や徐波活動(シータ波)は、約 0.1 m/s の速度で伝播し、非シナプス性の弱い電場によって変調されることがわかっています。

 

細胞外電場とエファプティック・カップリング

細胞外電場とエファプティック・カップリング

Slow periodic activity in the longitudinal hippocampal slice can self-propagate non-synaptically by a mechanism consistent with ephaptic coupling

J Physiol. 2019 Jan;597(1):249-269. doi: 10.1113/JP276904

Theta waves, neural spikes and seizures can propagate by ephaptic coupling in vivo

Exp Neurol. 2022 Aug:354:114109. doi: 10.1016/j.expneurol.2022.114109

 

これまで神経細胞(ニューロン)は、シナプスを介した配線によるコミュニケーションを中心に考えられてきました。

多くの神経が同時に発火した時、弱い電場が生み出されていることが、脳波計(EEG)で確認できます。

長い間、この内因性電場は、自己伝播活動を媒介するには弱すぎると考えられてきました。

 

しかし、遅い周期的活動は、約 0.1 m / s の速度で伝播し、弱い電場によって変調されることがわかってきました。

化学シナプスやギャップ結合を伴わずに伝播し、また拡散による非シナプス性の伝播とは異なり、電場を生成して隣接する細胞を活性化する可能性があります。

この内因性の細胞外電場は、「エファプティック・カップリング」と呼ばれる、”非シナプス性のつながり”をつくります。

神経活動の電位が生み出した微弱な電場が、細胞外スペースを拡がって、他の神経の電気活動を刺激することで信号を伝えます。

 

細胞外スペースでの非シナプス性のコミュニケーションの1つとして、細胞外電場の働きがあります。

細胞外スペースとロジスティクスについては、関連記事をご参照ください ↓

脳の細胞外スペースとロジスティクス

てんかん様活動、徐波活動(シータ波)

活動中のニューロンによって誘発される弱い電場は、神経処理に影響を与え、潜在的な新しい細胞通信システムとなる可能性があります。

電磁波は、化学的シナプス伝播よりもはるかに速く、ギャップ結合における電気的シナプス伝播よりも長距離に及びます。

 

化学シナプス、電気シナプスについては、関連記事をご参照ください ↓

ギャップ結合と電気シナプスの可塑性

てんかん様活動と徐波活動(シータ波)は、シナプス接続を使用しない電場結合(エファプティック・カップリング)によって、約 0.1 m/s の速度で伝播します。

拡散による伝播速度は、0.0004 ~ 0.008 m/s の間で、これとは大きく異なります。また軸索伝導速度 0.3 ~ 0.5 m/s とも異なっています。

 

シータ波は、徐波睡眠中に皮質と海馬で観察される特徴で、記憶の固定化に関連していると考えられています。

学習や記憶におけるシナプス可塑性については、関連記事をご参照ください ↓

「シナプス可塑性」学習・記憶のメカニズム

てんかん活動は、興奮性シグナル伝達と抑制性シグナル伝達の間のバランスが興奮側に大きく傾いたときに発生します。これは多くの場合、大脳皮質の抑制性介在ニューロンの欠乏によって引き起こされます。

神経伝達物質シグナル伝達の変化に加えて、細胞外電場は脳内のニューロン活動の同期に影響を与えることにより、てんかんのメカニズムにおいて重要な役割を果たすと考えられています。

活動電位と電場結合

細胞外電場とエファプティック・カップリング

Annihilation of action potentials induces electrical coupling between neurons

プレプリント doi.org/10.1101/2023.05.24.542064

 

脳内のほとんどのニューロンは、軸索に沿って伝播する活動電位を生成します。シナプス終末では、それらは最終的に電気化学プロセスにつながり、シナプス後ニューロンとのコミュニケーションを可能にします。

 

ニューロンは活動電位と呼ばれる電気パルスを生成して伝播し、シナプス末端に到着すると消滅します。

消滅時に活動電位が局所的な放電を引き起こして、不均一な細胞外電場を生成します。

興奮した膜で生成される電場自体が、近くの細胞の膜電位に影響を与えています。

ニューロンのシナプス末端に到着した活動電位が消滅し、それによってエファプティック・カップリングのための電場が生成されます。

 

活動電位や膜電位については、関連記事をご参照ください ↓

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

まとめ

細胞外電場とエファプティック・カップリング

 

ニューロンは活動電位と呼ばれる電気パルスを生成して伝播し、シナプス末端に到着すると消滅します。その時、局所的な放電を引き起こして、細胞外電場を生成します。

この内因性の細胞外電場は、「エファプティック・カップリング」と呼ばれる、”非シナプス性のつながり”をつくります。

神経活動の電位が生み出した微弱な電場が、細胞外スペースを拡がって、他の神経の電気活動を刺激することで信号を伝えています。

てんかん様活動や徐波活動(シータ波)は、約 0.1 m/s の速度で伝播し、非シナプス性の弱い電場によって変調されることがわかっています。

 

細胞外電場とエファプティック・カップリング