「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

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【この記事のまとめ】
私たちの生体膜には、ATPというエネルギーを使い、濃度勾配に逆らってイオンの輸送を行うタンパク質(ATP駆動ポンプ)が存在しています。

ナトリウム‐カリウムポンプ(Na+/K+-ATPase)の働きで、細胞内外のイオンの濃度勾配をつくることで、膜電位が生じ、それが私たちの生命現象を支えています。

イオンの濃度勾配による輸送システムや、膜電位の変化による電気信号での情報伝達ができるようになっています。

また、ミトコンドリアの電子伝達系のシステムでも、膜タンパク質(F型H+-ATPase)によって、Hの濃度勾配や膜電位を駆動力として、たくさんのATPが産生されています。

私たちは間接的に光エネルギーを取り入れ、代謝によってATPというエネルギーを蓄え、そのATPの多くは膜電位という電気エネルギーに変換して、生命現象を維持しているのです。

 

私たちの体は、酸素・炭素・水素・窒素の元素で約96%が構成されています。

私たちの体を構成する主要物質は、水分が約60~70%を占め、その残りはタンパク質、そして脂質、糖質などの有機化合物でほとんど構成されています。

 

残りの元素はカルシウム・リン・イオウ・カリウム・ナトリウム・塩素・マグネシウムなどであり、これらのの微量元素もまた、私たちが生命を維持するためには、極めて重要な役割を果たしています。

 

生命とエネルギー代謝

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

 

私たちが生きていくためには、エネルギーが必要です。

食事によって体内に取り入れた糖質などを原料として、その代謝過程でできたエネルギーをすぐに使える形にして蓄えています。

それが、アデノシン三リン酸(ATP)という物質であり、エネルギー通貨と呼ばれています。

ATPは、リン酸とリン酸の間にある高エネルギーリン酸結合にエネルギーが蓄えられており、加水分解するときに放出するエネルギーを生体内で利用しています。

 

代謝反応(異化・同化)・ATPについては、関連記事をご参照ください ↓

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私たちの細胞は、このATPをたくさん必要としており、私たちの生命現象はATPを合成するシステムが支えています。

私たちの健康を維持するためには、ATPを産生するミトコンドリアの機能を高めるが非常に重要となります。

 

ミトコンドリアのエネルギー代謝については、関連記事をご参照ください ↓

ミトコンドリア・ダイナミクス 生命のエネルギー代謝

私たちの細胞は、細胞膜で区切られた空間内で生命活動を行っており、その機能によって恒常性を維持することができます。

この細胞膜の構造が、私たちの生命現象を支えており、必要な物質は出入り可能な仕組みがあります。

 

細胞膜のリン脂質については、関連記事をご参照ください ↓

「脂質クオリティと生命現象」脂肪酸の種類と特徴

この細胞膜の機能を維持するために、実はたくさんのATPのエネルギーが消費されています。

私たちが生体膜の機能を維持しているのではなく、生体膜を構成する物質によって、生体膜の機能が生まれ、生命現象が起こっているといっても過言ではありません。

 

膜電位と能動輸送ポンプ

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

 

膜ATPaseは、イオンを細胞膜の内外に能動輸送させる働きをする、細胞膜を貫通するタンパク質です。

ATPを加水分解したときに放出する化学エネルギーを利用し、物質を能動輸送する「ATP駆動ポンプ」と呼ばれています。

膜ATPaseには、輸送するイオンによって、Na+/K+-ATPase、H+-ATPase、Ca2+-ATPaseなどがあります。

私たちの細胞は、ATPの分解エネルギーを利用して、細胞膜の内外を物質の濃度勾配に逆らって、物質輸送することができます。

この機能が私たちの生命現象を生み出しているのです。

 

ナトリウム‐カリウムポンプ(Na+/K+-ATPase)

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

図は つねぴーblog  より引用

 

私たちの細胞膜上には、Naを細胞外に汲みだし、Kを細胞内に取り入れる、ナトリウム‐カリウムポンプ(Na+/K+-ATPase)と呼ばれる膜タンパク質があります。

細胞内のATPの分解エネルギーを使って、1回当たり3つのナトリウムイオン(3Na)を細胞外に汲み出し、同時に2つのカリウムイオン(2K)を細胞内に取り込みます。

細胞膜にはKチャネル(K+リークチャネル)というタンパク質があり、Kの濃度勾配によって、Kだけを選択的・受動的に細胞内から細胞外に透過させます。

細胞内は濃度勾配による拡散を引き止めるために、 細胞外に対して負の電位をもつようになり、細胞内外に電位差を生じさせています。これを「膜電位」と呼びます。

 

私たちの体には、膜電位による電気力場が生成して、生命現象となる生命場を形成しています、

生命場(ライフ・フィールド)については、関連記事をご参照ください ↓

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細胞内は物質濃度が細胞外より濃いため、放っておくと水が流入してきます。

Na+/K+-ATPaseは、Naを汲み出すことで細胞内の濃度を調整して、細胞の浸透圧調整も行っています。

これによって、細胞内の恒常性が維持できるようになっています。

 

また、細胞膜にはをNaを通すNaチャネルというタンパクが備わっており、このチャネルが開くとナトリウム濃度が薄い細胞内にNaが勢いよく入ってきます。

この時、協奏的に糖やアミノ酸などの必要物質が細胞内に取り込まれています。

私たちは細胞膜のNa+/K+-ATPaseを駆動させるために、合成したATPの約30%のエネルギーを消費しています。

また、このNa流入により電位が逆転することで、電気信号によって刺激を情報伝達しているのが神経細胞です。

神経細胞においては、合成したATPの約70%のエネルギーを、Na+/K+-ATPaseの駆動で消費しています。

 

プロトンポンプ(H+-ATPase)

H+-ATPaseには、ミトコンドリアの電子伝達系のF型H+-ATPase(複合体V)があります。

ミトコンドリア内膜を貫通するタンパク質で、膜タンパク質の約1割くらいがこのタンパク質です。

Hを細胞膜外に汲みだし、細胞内外に電位差を作り出しています。

ミトコンドリアでは、細胞膜を横切るHの流れによるエネルギーを使って、ATPをたくさん合成しています。

 

カルシウムポンプ(Ca2+-ATPase)

Ca2+-ATPaseは、細胞膜や筋小胞体の膜に存在します。

筋肉が収縮する際には、細胞膜のCaチャネルが刺激されると、筋小胞体から蓄えられていたCa2+が放出され、筋肉が収縮しまします。

ATPの分解エネルギーを使ってCa2+-ATPaseにより、小胞内にCa2+が汲み戻されることで、筋肉は緩んで再び伸びることができるようになります。

Ca2+は他の細胞内でも信号伝達にも使われており、このポンプはカルシウムイオンの量を減らして細胞内濃度を非常に低く抑え、細胞が信号伝達できるように準備する働きを継続的に行っています。

 

筋肉の収縮弛緩のメカニズムについては、関連記事をご参照ください ↓

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ミトコンドリアの電子伝達系のATP合成

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

 

電子伝達系とは、NADHやFADH2から放出された電子が、ミトコンドリア内膜において伝達される過程で、ミトコンドリア内膜を挟んだH +の濃度勾配と電位差ができ、その駆動力によってATP合成酵素からATPが産生される系のことです。

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

図は funakoshi  より引用

 

Complex Ⅰは 、NADHの電子をユビキノン(Q)に渡して、還元型のユビキノール(QH2)を産生します。

この時、4つのHがマトリクスから膜間腔へ輸送されます。

Complex Ⅱは、コハク酸の電子がFADに渡されFADH2となり、最終的にはユビキノン(Q)に渡され、還元型のユビキノール(QH2)を産生します。

この時には、輸送されるHはありません。

Complex Ⅲは、ミトコンドリアの酸化的リン酸化に関わる主要タンパク質です。Complex ⅠとⅡでできたユビキノール(QH2)の電子をシトクロムcに渡します。

この時、4つのHがマトリクスから膜間腔へ輸送されます。

Complex Ⅳはミトコンドリア電子伝達系内の最終的な電子受容体です。シトクロムcの電子が、最終的に酸素(O2)に渡され、水(H2O)を産生します。

この時、2つのHがマトリクスから膜間腔へと輸送されます。

 

Complex Ⅴは、電子伝達鎖と複合体を形成していないミトコンドリアのF型H+-ATPaseです。

Complex Ⅴは、電子伝達鎖によって生成されたプロトン濃度勾配と膜電位を駆動力として、Piの存在下でADPのリン酸化によってATPを合成しています。

 

ComplexV F型H+-ATPase(F1F0

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

図は BRH  JT生命誌研究館 より引用

 

ミトコンドリアのF型H+-ATPase(F1F0)は、ものすごく小さな回転モーターによるエネルギー産生システムです。

ミトコンドリアの内膜から突き出した部分がF1で、ATPをADPとリン酸に加水分解して回転する、F1-ATPaseです。

Foは膜に埋まっている部分でHの流れを利用して回転します。

この2つのモーターは、それぞれの回転方向は互いに逆向きで、回転子と固定子とで結合してひとつのATP合成酵素となっています。

細胞内では、強力な膜電位(Hの流れ)で動き始めたFoモーターが、F1を逆向きに強制回転し、F1がATP加水分解の逆反応であるATP合成反応を進めます。

一方、膜電位が足りないときには、F1モーターがATPを加水分解してFoを逆回転させて、水素イオンの能動輸送を行っています。

私たちの細胞の中では、F型H+-ATPase(F1F0)がくるくると回り続けて、私たちの生命維持に欠かせないATPがつくられています。

これによって、私たちに必要なATPの9割以上が産生されています。

 

ミトコンドリア内で電子伝達系が障害されると、膜電位が低くなり、ミトコンドリアが機能不全に陥ります。

そして膜電位が消失してしまうと、シトクロムcを細胞質に流失してアポトーシスを起こしてしまします。

 

まとめ

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

 

私たちの生体膜には、ATPというエネルギーを使って、濃度勾配に逆らってイオンの輸送を行うタンパク質(ATP駆動ポンプ)が存在しています。

ナトリウム‐カリウムポンプ(Na+/K+-ATPase)の働きで、細胞内外のイオンの濃度勾配をつくることで、膜電位が生じ、それが私たちの生命現象を支えています。

イオンの濃度勾配による輸送システムや、膜電位の変化による電気信号での情報伝達ができるようになっています。

また、ミトコンドリアの電子伝達系のシステムでも、膜タンパク質(F型H+-ATPase)によって、Hの濃度勾配や膜電位を駆動力として、たくさんのATPが産生されています。

 

私たち人間は、太陽の光エネルギーをそのまま利用することができません。

植物が光合成によって、光エネルギーを使って二酸化炭素と水から、グルコースと酸素を合成しています。

私たちは、光エネルギーから変換された物質を、食事と呼吸によって取り入れて代謝することで、ATPの化学エネルギーに変換しています。

私たちは間接的に光エネルギーを取り入れ、代謝によってATPというエネルギーを蓄え、そのATPの多くは膜電位という電気エネルギーに変換して、生命現象を維持しているのです。

 

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP