抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

【この記事のまとめ】
新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認された、抗体カクテル療法(ロナプリーブ点滴静注セット)について、その有効性の評価を行ないました。

真のエンドポイントである「COVID-19感染での重症化による死亡を減らす」効果を明確に示すことはできていません。

またロナプリーブの供給システムには大きな問題があります。

国内初の軽症~中等症 Ⅰ を対象とした治療薬ですが、ほとんどの国民はその恩恵を受けることはできません。

2021年7月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第4の治療薬として、抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット」が特例承認されて話題になっています。

COVID-19の治療薬として、重症化による死亡を防ぐことができる治療薬の開発には、非常に期待が寄せられています。

 

承認審査の資料から、その有効性について評価を行いました。

また政府によるロナプリーブの供給システムには、大きな問題があると思われます。

 

抗体カクテル療法 ロプナリーブ点滴静注セット

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

ロナプリーブは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質に対する2種類の中和抗体、カシリビマブとイムデビマブを同時投与します。

2種類の中和抗体を混ぜて使用することから、抗体カクテル療法と呼ばれ、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害し、ウイルスの増殖を抑制する効果があります。

 

ロナプリーブの抗体カクテル療法は、重症化リスク因子を有し酸素飽和度93%以上の患者を対象とした海外臨床試験(COV-2067試験)より、2020年11月から米国で緊急使用 Emergency Use Authorization(EUA)が許可されています。

その試験結果によると、入院または死亡に至った被験者の割合は、プラセボ群 3.2%に対しロナプリーブ投与群  1.0%で、入院または死亡のリスクを70%低下させたというものです。

中外製薬のニュースリリース第Ⅲ相臨床試験 REGN-COV 2067試験)

 

このエビデンスの詳細について、評価していきたいと思います。

海外での緊急使用の実績により、国内で特例承認されるというのは、COVID-19ワクチン(コミナティ筋注など)と同じ流れとなっています。

 

ロナプリーブの有効性の評価

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

「PMDAの医療用医薬品 情報検索」から

ロナプリーブと入力して検索を実行

 

「審査報告書」「申請資料概要」の資料から、詳しく情報収集をして有効性の評価を行なっています。

論文プレプリント REGEN-COV Antibody Cocktail Clinical Outcomes Study in Covid-19 Outpatients

 

国内では第Ⅰ相試験(JV43180 試験)しか実施されておらず、日本人における第Ⅲ相試験での有効性は確認されていません。

 

第Ⅲ相試験(REGN-COV 2067試験)

プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が、米国、メキシコ及びルーマニアの 3 カ国 104 施設で実施されました。本試験の主な選択・除外基準は表 21 のとおりです。

※ワクチン接種した人は除外されています。

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

【主要評価項目】COVID-19 による入院又は理由を問わない死亡の割合

2400㎎群(カシリビマブ1200㎎・イムデビマブ1200㎎)

プラセボ群 4.6%(62/1341例)、本剤2400 mg 群 1.3%(18/1355例)

相対リスク減少率 71.3%(95%CI:51.7, 82.9)

絶対リスク減少率 3.3%

治療必要数 約30人

2400㎎群(カシリビマブ1200㎎・イムデビマブ1200㎎)を投与した30人のうちの1人だけが、入院又は死亡しない恩恵を受け、残り29人にベネフィットはない結果。

 

1200㎎群(カシリビマブ600㎎・イムデビマブ600㎎)

プラセボ群 3.2%(24/748例)、本剤1200 mg 群 1.0%(7/736例)

相対リスク減少率 70.4%(95%CI:31.6, 87.1)

絶対リスク減少率 2.2%

治療必要数 約45人

1200㎎群(カシリビマブ600㎎・イムデビマブ600㎎)を投与した45人のうちの1人だけが、入院又は死亡しない恩恵を受け、残り44人にはベネフィットがない結果。

 

相対リスク減少率、絶対リスク減少率、治療必要数について、関連記事をご参照ください ↓

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

 

エンドポイントが複合エンドポイントなっており、要注意なポイントです。

 

真のエンドポントは「COVID-19感染による重症化による死亡を減らす」ことです。

真のエンドポイントについては、関連記事をご参照ください ↓

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

 

複合エンドポイントの中で、よりハードなものを個別に分析してみます。

死亡の発現割合

2400㎎群(カシリビマブ1200㎎・イムデビマブ1200㎎)

プラセボ群 0.2%(3/1341例)、本剤2400 mg 群 0.07%(1/1355例)

相対リスク減少 67.0%(95%CI:-216.7, 96.6)  ※有意差なし

 

1200㎎群(カシリビマブ600㎎・イムデビマブ600㎎)

プラセボ群 0.1%(1/748例)、本剤1200 mg 群 0.1%(1/736例)

相対リスク減少 -1.6%(95%CI:-1522, 93.6)  ※有意差なし

 

人工呼吸器の使用割合

2400㎎群(カシリビマブ1200㎎・イムデビマブ1200㎎)

プラセボ群 0.4%(6/1341例)、本剤2400 mg 群 0.07%(1/1355例)

相対リスク減少 83.5%(95%CI:-36.8, 98.0)  ※有意差なし

 

1200㎎群(カシリビマブ600㎎・イムデビマブ600㎎)

死亡の発現割合 プラセボ群 0.3%(2/748例)、本剤1200 mg 群 0.1%(1/736例)

相対リスク減少 49.2%(95%CI:-459.2, 95.4)  ※有意差なし

 

ICU入室割合

2400㎎群(カシリビマブ1200㎎・イムデビマブ1200㎎)

プラセボ群 1.3%(18/1341例)、本剤2400 mg 群 0.4%(6/1355例)

相対リスク減少 67.0%(95%CI:17.2, 86.9)  ※有意差あり

 

1200㎎群(カシリビマブ600㎎・イムデビマブ600㎎)

プラセボ群 0.9%(7/748例)、本剤1200 mg 群 0.4%(3/736例)

相対リスク減少 56.4%(95%CI:-459.2, 95.4)  ※有意差なし

 

よりハードなエンドポイントである、死亡や人工呼吸器使用においては、発現数が非常に少なく有意差が認められません。

ICU入室は1200㎎では有意差がなく、2400㎎では有意差を示しました。

つまり、重症化リスクが高い患者を対象に臨床試験を行っていますが、プラセボ群でも死亡や人工呼吸器を使用する割合が非常に少ない結果でした。

真のエンドポントである「重症化による死亡を減らす」効果を示したとは言えません。

 

ここに複合エンドポントによる統計学のマジックがあるのです。

 

またこの臨床試験の結果を考察して、重症化リスクが高いと言われている対象者でも、ワクチン接種を受けることなく、治療薬を投与しなくても、重症化して死亡する割合は、0.1%程度と非常に低いことがわかりました。

 

被験者の特性が影響しているのかもしれません。

年齢の中央値は48~50歳で、65歳以上は10~15%程度と少数です。

重症化リスク因子の内訳は、肥満(BMI 30 kg/m2超と定義)が55.7~61.4%で最も多く、次いで年齢50歳以上48.5~56.2%、高血圧を含む心血管系疾患31.4~38.4%でした。

 

ロナプリーブの供給体制

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

ロナプリーブは軽症~中等症の患者に使用できるCOVID-19治療薬として国内で初めて特例承認されました。

その臨床成績から、重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者(軽症~中等症 Ⅰ )を対象に投与を行うことされています。

ロナプリーブの総供給量は全世界的に限られており、国内での安定的な供給が難しいことから、厚労省は供給が安定するまでの間、ロナプリーブを国で買い上げ、医療機関からの依頼に基づき無償提供する方針を決めています。

ロナプリーブに関する医療機関向けQ&Aを盛り込んだ7月20日付事務連絡によると、ロナプリーブの配分を希望する医療機関は、中外製薬が開設した「ロナプリーブ登録センター」に登録し、配分依頼の手続きを進める必要があります。

同センターでは、各医療機関からの配分依頼を各平日15時時点で取りまとめ、原則、翌日から3日以内 (土日祝日を除く)に送付するとしています。

 

病院・有床診療所の入院患者に対象を限定されることになります。

そして、ロナプリーブのもうひとつの注意点は、重症化してからは使用できない点にあります。

高流量酸素又は人工呼吸器管理を要するような重症患者において、ロナプリーブは症状を悪化させることがわかっており使用できません。

つまり軽症~中等症 Ⅰ で入院して、重症化リスクがあると判断された場合のみ、使用できるというわけです。

 

政府の方針転換

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

この抗体カクテル療法がマスメディアで話題になると同時に、政府は入院対象を重症者や中等症のうち重症化リスクの高い患者らに限定し、自宅療養を基本とする新たな方針を打ち出しました。

つまり軽症者は基本入院でできないため、たとえ重症化リスクがある人でも、抗体カクテル療法(ロナプリーブ)は使用できません。

自宅療養で重症化して入院することになっても、重症化してからでは抗体カクテル療法(ロナプリーブ)は使用できません。

治療薬を使うタイミングが非常に難しいのです。中等症 Ⅰ でうまく入院して、すばやく治療薬を投与するしかいないというわけです。

ほとんど使えないのではないでしょうか?

 

誰のための治療薬なのか? 何のために特例承認したのでしょうか?

 

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

朝日新聞記事より引用

 

イベルメクチンのCOVID-19感染症への適用外使用を認めていながら、現実的には使用できない状況と同じような構図ですね。

イベルメクチンについては、関連記事をご参照ください ↓

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

まとめ

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由

 

第4の治療薬 抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット」の有効性について評価を行ないました。

臨床試験の結果からは、真のエンドポイントである「COVID-19感染による死亡を減らす」効果は、明確に示すことはできていません。

 

重症化リスク因子を有した軽症~中等症Ⅰを対象とした治療薬でありながら、入院患者しか使用できない供給システムとなっています。

また政府の方針では、軽症者や中等症 Ⅰ の患者は基本的に入院できないため、ほとんどの方はこの治療薬の恩恵を受けることはないと思われます。

 

抗体カクテル療法「ロナプリーブ」 期待できない理由