副作用と有害事象の関係 これは副作用じゃないの?

副作用と有害事象の関係 これは副作用じゃないの

副作用と有害事象の関係 これは副作用じゃないの?

【この記事のまとめ】

薬を飲んで健康被害が出た場合、これは薬の副作用じゃないのか?と思ってしまう方が多いのではないでしょうか?

副作用と言われたり、副作用の疑いと言われたり、有害事象と言われたり、いったい何が違うのでしょうか?

副作用と有害事象の関係について詳しく解説いたします。

薬の有効性の指標である「効果」は、因果関係を判定せずにすべてを「効果」と考えます。

薬の安全性の指標である「副作用」は、「有害事象」のうち因果関係があると判断されたものです。

 

薬の副作用という言葉は、誰もが耳にするようになって、怖いものというイメージが定着しました。

副作用と言われたり、副作用の疑いと言われたり、有害事象と言われたり、いったい何が違うのでしょうか?

 

副作用と有害事象の関係について、詳しく説明したいと思います。

また薬の臨床試験での有効性と安全性について考え、よりその関係性を理解しましょう。

 

副作用と有害事象の違い

副作用と有害事象の関係 これは副作用じゃないの

 

薬の作用と副作用は同じものです。

あなたにとって都合のよいものが効果(作用)で、あなたにとって都合が悪いものが有害事象(副作用)となります。

作用と副作用の関係については、関連記事ををご参照ください ↓

薬の副作用が怖い 飲みたくない心理とは?

 

有害事象

薬を飲んで、自分にとって都合が悪い症状(健康被害)が発現したものが、有害事象となります。

 

副作用

有害事象の中で、薬との因果関係があると判断された場合には、副作用と呼ばれます。

意外と知られていないようですが、もし副作用により入院治療が必要になるほどの重篤な健康被害が生じた場合には、国による医薬品副作用救済制度というのがあります。

PMDAのホームぺージ 医薬品副作用救済制度

 

例をあげて説明していきます。

①ある薬を飲みました

②すごくお腹が痛くなりました

③薬を飲んだ副作用だと思いました

副作用と有害事象の関係 これは副作用じゃないの

しかしながら、お腹が痛くなる原因というのは、日常的に他にもいっぱい存在します。

食べ物や飲み物、体が冷えたり、疲れたり、ストレスなど。

他の要因でお腹が痛くなった時に、たまたま薬を飲んでいた場合もあるというわけです。

飲んだ薬と因果関係があって、お腹が痛くなったと判断された場合には、副作用となります。

薬を飲んでお腹が痛くなったのか、他の要因でお腹が痛くなったのか、因果関係が判定できない場合には、副作用とは呼びません。

 

因果関係を判定するのは、簡単なことではありません。

だから「副作用の疑いがある」という言葉が多く使われるのです。

複数の薬を飲んでいる場合には、いったいどの薬が原因なのか?

健康食品やサプリメントを摂っている場合には、そちらの原因はないのか?

原因と思われる薬をを中止して、有害事象の症状が回復するのか?

再度、原因と思われる薬を服用して、同じように有害事象が発現するのか? 

そのようなことを確かめていかないと、薬との因果関係は判定できません。

その薬の作用が原因で、有害事象が発現したのかどうかを判定することは、皆さんが思っている以上に難しいことです。

 

ワクチン接種の有害事象の因果関係については、関連記事をご参照ください ↓

ワクチン接種 リスクとベネフィット 因果関係は難しい

 

薬のベネフィットとリスクを考える場合には、薬の有効性については”効果”を考え、薬の安全性については”副作用”を考えます。

有益なもの(都合がよいもの)はすべて”効果”と考え、

有害なもの(都合が悪いもの)は、因果関係があると判定されたものだけを”副作用”と考えています。

この違いを誤解している方が多いというわけです。

 

臨床試験での安全性の考え方

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まずは薬の臨床試験における安全性について考えていきましょう。

実際の臨床試験では、治験薬だけなく、プラセボ群(偽薬を飲んだ)でも、たくさんの有害事象が報告されます。

つまりそれだけ、薬の作用とは関係のない有害事象の報告がたくさんあるということがわかります。

 

その有害事象のうち、薬との因果関係があると判断されたものが、副作用と考えられます。

そのなかにはノセボ(ノーシーボ)効果も含まれます。

この副作用が、その薬の安全性の指標となっていきます。

 

ノセボ(ノーシーボ)効果

反偽薬効果とも呼ばれ、この薬に副作用があると信じ込むことによって、その副作用が強く発現する効果。

プラセボ効果(偽薬効果)がマイナスに働いてしまうケース。

 

プラセボ効果とノセボ効果については、関連記事をご参照ください ↓

「プラセボ効果とノセボ効果」神経心理学

臨床試験での有効性の考え方

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次に薬の臨床試験における有効性について考えていきましょう。

薬の有効性に影響を与える要因については、以下の記事をご参照ください。

飲みたくない薬 有効性に与える影響

 

薬の有効性に関しては、因果関係の判定をするのではなく、すべてを効果と考えています

ただし、本当に薬理作用があるのかどうかを判断するために、プラセボ群対照による二重盲検試験が行われています。

それにより、治験薬とプラセボ群との間に有意差があれば、薬理作用があると判断できます。

医薬品の臨床試験は、プラセボ群対照による二重盲検試験が行われる事が、非常に価値があると思います。

病気の種類によっては、薬理作用がなくても、効果がでてしまうものが少なからずあるからです。

つまり多くの人が飲めば飲むほど、効いたと感じる人も自然とたくさん出てくるようになります。

 

健康食品やサプリメントでは、数名の症例報告や、有名な教授などの推奨で宣伝する印象があります。

しかし、プラセボ群対照での臨床試験がされていないので、その効果が製品の作用によるものなのかを判断することができません。

つまり有効性に関していえば、プラセボ対照で臨床試験をされていない場合には、エビデンスがないと判断できます。

 

薬理作用以外の要因で効く病気

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Aタイプは、プラセボ(偽薬)群でも、有効性を示しますので、薬理作用以外の影響も大きいと考えられます。

代表的なものとして、鎮痛剤や安定剤・睡眠剤のような薬が、このような有効性を示します。

 

Bタイプは、プラセボ群の効果が低く、ほとんど薬理作用による効果と考えられます。

抗コレステロール薬、骨粗鬆症の治療薬など、プラセボ群ではこのような検査数値には、ほとんど効果を示しません。

 

健康食品やサプリメントを飲んで、なんとなく効果を感じている場合があります。

Aタイプのように、薬理作用がなくても効果を示している可能性が高いことを、覚えておいてください。

 

個人にとっての有効性と安全性

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薬の有効性についての効果と、薬の安全性についての副作用を説明してきました。

最後に、個人にとっての有効性と安全性という視点からも、説明したいと思います。

 

薬を飲んで症状が楽になったと感じたら、そこには効果があります。

薬理作用によるものなのか?プラセボ効果なのか?たまたま治ったものなのか?それは個人にとっては関係ありません。

個人にとっては、症状が良くなったという結果がすべてです。

本人が満足しているのであれば、決して否定されるものではありません。

 

薬を飲んで有害事象で苦しんだ場合、薬との因果関係が判定できないから副作用じゃないと言われました。

しかし個人にとっては、健康被害がでて苦しんでいることには変わりありません。

 

まとめ

副作用と有害事象の関係 これは副作用じゃないの

 

薬の有効性の指標は「効果」、薬の安全性の指標は「副作用」です。

薬の有効性では、有益なものは因果関係を判定せずにすべてを「効果」と考えます。

薬の安全性では、「有害事象」のうち因果関係があると判断されたものが「副作用」となります。

 

薬が原因で、有害事象が発現したのかどうかを判定することは、簡単なことではありません。

因果関係を判定するのが難しいケースが多いのです。

しかし個人とっては、薬との因果関係があってもなくても、健康被害がでていることには変わりありません。

 

 

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