コラム「風邪の効用」
『風邪の効用』
コロナ禍になってから、少し体調を崩して風邪を引くことが、大変なストレスになる世の中になったと思う。
コロナ陽性になると、やれ隔離や濃厚接触だのと、体調面以外のストレスが多過ぎるのだ。
本来、風邪は誰でも引くものであり、風邪を上手に治せば風邪を引く前よりバランスがとれて体調がよくなったりする。
野口整体創始者の野口晴哉氏は、「風邪の効用」という言葉を著書で使っている。
私たちは体を使っているうちに、ある一部分に偏った疲労状態が生じ、弾力性が失われて強張りが生じてしまったりする。
風邪を引いて治る過程で、そのような強張りもバランスがとられて自然に治癒していくというのだ。
どうやら風邪という病態は、私たちの恒常性を維持するために一役買っているのかもしれない。
ウイルス感染をきっかけに起こる炎症反応によって、私たちの体はリモデリングされている。
もともとバランスを崩して、体内環境が乱れている状態を、炎症反応によって体内掃除するような役割もあるのではないだろうかと思う。
ウイルス感染が起こると、発熱と共に関節痛や筋肉痛が起こって、食欲がなくなって食べたくなくなる。
体のバランスが大きく崩れてしまったかのように思われるが、体をリモデリングする過程で一時的に起こっている現象だと、私は思う。
発熱が治まり食欲が回復してきた頃には、体が軽くなってスッキリするような感覚が得られたりするのだ。
炎症反応をうまく完結させることで、私たちの体はリモデリングされてバランスが整えられているのだろう。
コロナ後遺症などと言われて、コロナ感染をきっかけに様々な症状が数ヵ月以上も続くことがあったりする。
肥満や糖尿病などエネルギー代謝の異常によって、体内環境が慢性炎症状態になっていることが原因と考えられる。
炎症反応の経過がうまく完結せずに、慢性的な炎症状態が続いてしまうのだろう。
ウイルスは遺伝子を持っているが、自分だけでは増殖できず、宿主の細胞の中に入って初めて増殖することができる。
ウイルスだけでは、代謝によってエネルギーをつくることも、自己増殖することもできないのだ。
病原性のある微生物のように恐れられたりするが、生物ではないのだろうと、私は思う。
私たちの遺伝子に少し変化をもたらすものであり、細胞内のタンパク質に変化を与えている。
細胞力学に変化が起こって、ミトコンドリアのエネルギー代謝や細胞外マトリックスであるファシア(筋膜)にも影響が起こっているのだ。