ミトコンドリア・ダイナミクス 生命のエネルギー代謝

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

【この記事のまとめ】
好気性のミトコンドリアでのエネルギー代謝は、嫌気性の解糖系のエネルギー代謝より、はるかに大きいエネルギー(ATP)をつくることができます。

体内でのエネルギー消費量が多く、持続的に働き続けている脳、心臓、肝臓は、特にミトコンドリアの数が多く、ミトコンドリアによるエネルギー産生によって支えられています。

細胞の新陳代謝、細胞内の不要な物質のクリーニングを行い、細胞内の恒常性を維持するための機能として、オートファジーがあります。これによって損傷したミトコンドリアは分解除去されています。

またミトコンドリアは分裂と誘導を繰り返して、動的に形態を変化させて(ミトコンドリアダイナミクス)、私たちのホメオスタシスのために働いてくれています。

ミトコンドリアの機能を活性化させることが、私たちの生命力(免疫力)を上げる一番の近道になります。

私たちの体の細胞でエネルギーが十分つくられることが、細胞はもちろん、細胞によって形成される組織や器官が機能するために必要です。

また、そのエネルギーを使って細胞を新陳代謝(リモデリング)することが、私たちのホメオスタシス(恒常性維持)にとって重要となります。

 

細胞の新陳代謝(リモデリング)がしっかり行われていることが、生命力(免疫力)が高いということであり、その主役はミトコンドリアです。

私たちの生命力は、ミトコンドリアによって決まると言っても過言ではありません

 

 私たちはミトコンドリアが喜ぶ(活性化する)生活を行うことが、もっとも健康的な生き方であり、スローエイジングにつながります。

スローエイジングについては、関連記事をご参照ください ↓

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

 

ミトコンドリア 

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

 

私たち人間は、多数の細胞が集まることで組織・器官を形成している、多細胞生物です。

その最小単位である細胞には、核を中心に小胞体やゴルジ体、そしてミトコンドリアなどの様々な細胞小器官(オルガネラ)が独自の機能を持って、細胞の営みに関わっています。

なかでもミトコンドリアは、その特有の構造および機能から非常に注目されています。

 

ミトコンドリアの起源(細胞内共生説)

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

図は 生命系の理工学基礎 より引用

 

ミトコンドリアの起源として、プロテオバクテリアのような好気性細菌が、真核細胞の前身となる細胞に寄生して、その後の共生進化を経て、現在のような形でオルガネラとなった考えられています。

内部に独自の遺伝子(mtDNA)を持っており、細胞内で好気性呼吸によるエネルギー(ATP)生産を行い、エネルギー生産工場としての大きな役割を担っています。

 

私たちはミトコンドリアを使って好気性呼吸を行うことで、嫌気性呼吸(解糖系)とは比べものにならない莫大なエネルギーを手に入れました。

さらにミトコンドリアは、アポトーシス(細胞死)の制御や、カルシウム応答などの細胞機能制御などにも深く関わり、極めて多様な機能を持っています。

 

ミトコンドリアダイナミクス

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ミトコンドリアは、宿主の細胞分裂とは関係なく、自律的に分裂、増殖することができます。

細胞内では融合と分裂を頻繁に繰り返しながら、ダイナミック(動的)にその形態構造を変化させています。

 

細胞内の代謝状態や様々な細胞外シグナルを感知し、常に融合と分裂のバランスをシフトさせています。この動的な構造変化をミトコンドリアダイナミクスと呼びます。

ミトコンドリアダイナミクスは、私たちのホメオスタシス(恒常性維持)にとって、非常に重要であることがわかってきています。

 

私たちの身体は常に変化をしながら、ある一定の状態を維持し続けています(動的平衡によるホメオスタシス)。ミトコンドリアもまた私たちの細胞内で動的に変化し続けている存在なのです。

 

動的平衡やホメオスタシスについては、関連記事をご参照ください ↓

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ミトコンドリアのエネルギー産生(細胞呼吸)

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

 

私たちが体内でがエネルギーとして直接利用できるのは 、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる高エネルギー物質です。

ATPを作り出すことで、私たちは脳で物事を考えたり、体の筋肉を動かしたり、生命活動を行うことができます。

このATPを作り出すシステムが、私たちの生命のホメオスタシス(恒常性維持)にとって、最も重要なシステムの1つといえます。

 

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

図は 生命系の理工学基礎 より引用

 

私たちの体には、嫌気性と好気性の2種類のエネルギーのつくり方があります。

一つは細胞質内で行われる嫌気性(無酸素下)で行われる「解糖系」です。グルコースからピルビン酸を作りますが、その過程で2 分子のATP が作られます。

もう一つが好気性(有酸素下)でミトコンドリア内で行われる「TCAサイクル」と「電子伝達系」です。

解糖系、TCAサイクル、電子伝達系の3段階を経てエネルギーは作られることになり、 36または 38 分子のATPを作ることができ、効率がよくエネルギーを産生します。

ミトコンドリアでのエネルギー代謝は、解糖系にと比べてはるかに大きいエネルギー(ATP)をつくることができます。

 

解糖系のエネルギーは、全力で走ったり、重たいものを持ち上げたりする運動など、呼吸を止める無酸素運動で利用されています。瞬時に必要なATPをつくることができるからです。

骨格筋では白筋(ミトコンドリアが少ない)と呼ばれる筋肉が、解糖系をによる瞬発力を使っている筋肉です。

交感神経の反応(闘争・逃走 反応)では、瞬発力を必要とするので、解糖系が働いて即効的にエネルギー供給を行っています。

 

一方、長時間持続する運動では、解糖系ではエネルギー供給が足りないので、酸素を取り込みミトコンドリアによるTCAサイクルを回す必要があります。

骨格筋では赤筋(ミトコンドリアが多い)は、インナーマッスルと呼ばれる深層筋で、体幹の持続的な支持などの働きを行っています。

 

また心筋細胞、脳細胞、肝臓などの細胞では、特にミトコンドリアの数が多く、有酸素下でのミトコンドリアによるエネルギー産生によって支えられています。

ミトコンドリアの機能が低下するようなことがあれば、ミトコンドリアの数が多い臓器や器官ほど、その影響を受けてしまいます。

特に脳は全身の約21%のエネルギーを消費すると言われており、ミトコンドリアの損傷や機能低下は、脳機能に大きな影響を与えてしまいます。

交感神経の過緊張は、ミトコンドリアでのエネルギー産生を抑制するため、エネルギー不足による脳疲労を起こす原因になります。

 

脳のアイドリングにより脳疲労については、関連記事をご参照ください ↓

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副腎疲労については、関連記事をご参照ください ↓

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オートファジー

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オートファジー Autophagy

ミトコンドリアと小胞体の接触部位からオートファゴゾームという小器官ができ、細胞内の異常なタンパク質や古くなった小器官を二重の脂質膜で包み込みます。そこにリソソームが融合し、オートリソソームが形成されて分解する仕組みをオートファジー(Auto : 自ら Phagy : 食べる = 自食作用)といいます。

 

細胞は飢餓やその他のストレスに曝されると、自己の一部をオートファジーによって分解して栄養源にしています。オートファジーによって、タンパク質を分解してできたアミノ酸は、リサイクルされて体内で新しいタンパク質をつくるのに使われています。

つまり細胞の新陳代謝が行われているのです。

またオートファジーによって、老廃物や損傷したミトコンドリア、病原菌、異常タンパク質などを除去して、細胞内をクリーニングしています。

 

オートファジーは、細胞の新陳代謝と細胞内の不要な物質を分解除去して、細胞内の恒常性を保つために、重要な役割を担っています。

また細胞内で不要なタンパク質を処理できなくなると、小胞体ストレスが生じ、ミトコンドリア機能も低下することがわかっています。

 

マイトファジー

ミトコンドリアは生命活動のためのエネルギーを供給しますが、その過程で損傷を受けると、活性酸素種やチトクロム C を産生・放出し、アポトーシスを誘導して細胞を死に導く危険な存在になります。

オートファジーにより、損傷したミトコンドリアを選択的に分解除去することを、マイトファジーと呼びます。

 

アポトーシス

アポトーシスとは、不要になった細胞が死を命じられることです。遺伝子情報としてプログラムされている細胞死のことです。

本来、癌細胞はアポトーシスによって死ぬようにプログラムされています。

 

 

ミトコンドリアの活性化

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加齢に伴うミトコンドリアの機能低下が、様々病気を引き起こす原因となります。

老化現象であるサルコペニアやフレイルや、アルツハイマーなど神経変性疾患、糖尿病、癌などの生活習慣病の発症が、ミトコンドリアの機能障害と関連が深いことがわかってきています。

 

自律神経と呼吸

過剰なストレスは交感神経の過緊張を生じさせます。

慢性的な交感神経の緊張状態は、浅い呼吸による低酸素状態、血流が悪くなり低体温状態をつくります。

その結果、ミトコンドリアの内呼吸(細胞呼吸)を抑制して、エネルギー不足につながります。

 

脳はたくさんのエネルギーを必要としており、ミトコンドリアの機能低下は、脳機能に大きな影響を与えてしまいます。

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深い呼吸により副交感神経を働かせて、ミトコンドリアで内呼吸(細胞呼吸)がしっかり行われることが重要となります。

内呼吸(細胞呼吸)については、関連記事をご参照ください ↓

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運動と空腹感

運動によってエネルギー(ATP)が消費されて、エネルギー欠乏を起こすと、細胞ではAMPプロテインキナーゼ(AMPK)という酵素が活性化し、ミトコンドリアを増やすように働きます。

AMPKが働くことでPGC-1αというタンパク質が活性化されて、ミトコンドリアがつくられるようになります。

ミトコンドリアを増やして、活性化するためには、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。満腹になるとAMPKの活性が抑制されるため、運動前にはなるべく食事を摂らない方がよいです。

 

またお腹がすいていないのに、時間がきたら3食しっかり食べるのは止めましょう。お腹がすいたと感じる時間をつくることが、ミトコンドリアを増やすことにつながります。

 

栄養のある食事

糖質・脂質・タンパク質などカロリーばかり気にする人が増えましたが、ミトコンドリア内でのTCA回路、電子伝達系を回すためには、ビタミンB群、 コエンザイムQ10、マグネシウム、亜鉛、鉄など、たくさんののビタミン・ミネラルが必要です。

こうした栄養素が不足すると、エネルギー不足の原因となります。

食事の際には、たくさんの食品からバランスよく栄養を摂るように心掛けましょう。

 

ある種のサプリメントが推奨されたりしますが、それは機械論による要素還元主義の考え方です。

要素還元主義については、関連記事をご参照ください ↓

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まとめ

ミトコンドリアダイナミクス 生命のエネルギー代謝

 

私たちの体には、嫌気性と好気性の2種類のエネルギーのつくり方があり、それぞれを必要に応じて使い分けています。

好気性のミトコンドリアでのエネルギー代謝は、嫌気性の解糖系のエネルギー代謝より、はるかに大きいエネルギー(ATP)をつくることができます。

体内でのエネルギー消費量が多く、持続的に働き続けている脳、心臓、肝臓は、特にミトコンドリアの数が多く、細胞呼吸によるエネルギー産生によって支えられています。

ミトコンドリアの損傷や機能障害は、これらの臓器に大きなダメージを与えることになります。

 

オートファジーは、細胞の新陳代謝と細胞内の不要な物質を分解除去して、細胞内の恒常性を保つために、重要な役割を担っています。

このオートファジーによって、損傷したミトコンドリアは分解除去されます。

またミトコンドリアは分裂と誘導を繰り返して、動的に形態を変化させて(ミトコンドリアダイナミクス)、私たちのホメオスタシスのために働いてくれています。

トコンドリアを増やし機能を活性化させることが、私たちの生命力(免疫力)を上げる一番の近道になります。

 

ミトコンドリアのエネルギー代謝が、私たちの自然治癒力の基盤となります。自然治癒力については、関連記事をご参照ください ↓

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