ゼータ電位と血栓

ゼータ電位と血栓

ゼータ電位と血栓

【この記事のまとめ】
ゼータ電位は、粒子の表面電荷と周囲の媒質との相互作用を反映しており、コロイド系の粒子間の引力すなわち粒子の凝集や凝固など安定性に影響を与えます。

細胞膜電位の影響は細胞外空間にまで及び、そこで細胞のゼータ電位を変化させることがわかっています。

細胞は膜電位の変化を利用して、細胞表面から近い距離にある他の細胞、生体分子、イオンとの相互作用を変えることができます。

血液はコロイド状粒子で構成されており、ゼータ電位を負電荷に保っています。

ゼータ電位の負電荷が減ってくると、静電反発力を減らして、コロイド溶液は凝集しやすくなります。

血液中に正に帯電したタンパク質が増加すると、ゼータ電位を低下させて赤血球同士の静電反発力を減らし、赤血球凝集を誘発します。

 

 

The cellular zeta potential: cell electrophysiology beyond the membrane

Integr Biol (Camb). 2024 Jan 23:16:zyae003. doi: 10.1093/intbio/zyae003

EZ水と水和殻

ゼータ電位と血栓

 

水は細胞内に最も多く存在する分子であり、細胞全体の約70%を占めています。

細胞には小器官があり、核酸、タンパク質、脂質、糖質など、様々な高分子が細胞膜の中にしっかりと詰まっています。

細胞内の水分子は親水性表面から数 nm の距離にあり、その多くは界面に存在して溶質を排除するという特徴を持っています。これを EZ水と呼びます。

 

EZ水については、詳しくは関連記事をご参照ください ↓

生体水の秩序性「EZ水」

 

EZ水は親水性の面の側にマイナスの電荷を持ち、一方その対側のバルクの水がプラスとなって電位勾配を持つことで、電子の供給源になると同時に、電池のごとくエネルギーを蓄える働きを持ちます。

この層に赤外光(IR)を照射すると厚みを増すことから、生体が環境からエネルギーを得る機序としても考えられています。

 

赤外光(IR)によるフォトバイオモジュレーションについては、関連記事をご参照ください ↓

「フォトバイオモジュレーション」ミトコンドリア代謝の活性化

グラウンディング(アーシング)による電子の補給は、EZ水の形成に重要であると考えられます。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

グラウンディング(アーシング)効果

 

水溶液中の物質は、水和することで安定化します。タンパク質の構造と機能は、水和殻に強く影響されます。

タンパク質の周りの水和殻(EZ水)は、1~5 nmの距離までバルク水とは異なるダイナミクスを持っています。

このEZ水が不足すると、タンパク質は通常の機能環境から外れ、折り畳みに異常が生じてしまいます。

 

タンパク質の水和殻については、関連記事をご参照ください ↓

生命の基質「水」と自己組織化

 

また水和殻(EZ水)は、コラーゲンの三重らせんの安定化にも役立っています。

コラーゲンの水和殻については、関連記事をご参照ください ↓

コラーゲンの水和と脱水と機械的変形

ゼータ電位

ゼータ電位と血栓

 

電気二重層(Electrical double layer)は、液体中の粒子の界面に電位が与えられたときに形成される2層構造のことです。

粒子を取り囲む液体層は、イオンが強く結合している内側の薄い領域(Stern 層)と、あまり強く結合していない外側の領域(diffuse 層)の2つの層で構成されます。

拡散層(diffuse層)内には、イオンと粒子が安定した実体を形成する境界があり、コロイド系における粒子のすべり面(Slipping plane)と呼ばれています。

このすべり面における電位がゼータ電位です。

ゼータ電位は、粒子の表面電荷と周囲の媒質との相互作用を反映しており、コロイド系の粒子間の引力すなわち粒子の凝集や凝固など安定性に影響を与えます。

ゼータ電位と血栓

メイワフォーシス(株)ゼータ電位の模式図より引用

 

細胞の内部と外部のイオン濃度の差により、膜を横切る電位が発生し、膜電位と呼ばれています。

膜電位については、関連記事をご参照ください ↓

「生命と電気エネルギー」膜電位とATP

 

ゼータ電位は、通常は表面電荷から生じると理解されていますが、細胞がイオンチャネルの使用を通じて機械的に変えることができる細胞膜電位と強い関連を示します。

つまり、膜電位の影響は細胞外空間にまで及び、そこで細胞のゼータ電位を変化させることがわかっています。

細胞は膜電位の変化を利用して、細胞表面から近い距離にある他の細胞、生体分子、イオンとの相互作用を変えることができます。

 

生体電気と生命システムについては、関連記事をご参照ください ↓

生体電気と生命システム

血液のゼータ電位

ゼータ電位と血栓

 

血液はコロイド状粒子で構成されており、ゼータ電位を負電荷に保っています。

負電荷の相互反発に依存しているため、ゼータ電位が負であればあるほど、コロイド溶液は分散します。

ゼータ電位の負電荷が減ってくると、コロイド溶液は凝集しやすくなります。

 

フィブリノーゲンや免疫グロブリンなどの正に帯電したタンパク質の増加は、ゼータ電位を低下させて、赤血球同士の静電反発力を減らし、より大きなスタッキングを可能にします。

血液のゼータ電位が弱くなると、次第に大きな血栓が形成されていきます。

 

老化により血液細胞は電気的特性が変化することが知られており、徐々に負の電荷が小さくなっていきます。

ゼータ電位を負電荷に保つためには、EZ水の役割が重要となります。

EZ水については、関連記事をご参照ください ↓

生体水の秩序性「EZ水」

 

SARS-CoV-2 スパイクタンパク質による赤血球凝集

SARS-CoV-2 Spike Protein Induces Hemagglutination: Implications for COVID-19 Morbidities and Therapeutics and for Vaccine Adverse Effects

Int J Mol Sci. 2022 Dec 7;23(24):15480. doi: 10.3390/ijms232415480

SARS-CoV-2のこの血球凝集特性は、重要な臨床的影響を及ぼします。

数兆個の赤血球がそれぞれ1分間に約1回、狭い肺毛細血管を循環しているため、赤血球の凝集は酸素化を妨げる可能性があります。

虚血、内皮損傷、血管閉塞は、COVID-19の重症例で頻繁に観察されています。

COVID-19の凝集、凝固、血管閉塞に関与する血球の種類とプロセスは多岐にわたりますが、ウイルス誘発性の赤血球凝集(HA)がその1つと考えられます。

 

生理学的条件下では、赤血球は負に帯電したゼータ電位により、互いに分離した状態を維持します。

スパイクタンパク質の正電荷が、負に帯電したゼータ電位を中和し、赤血球の自然な静電反発力を低下させることで、赤血球の凝集を誘発すると考えられます。

 

SARS-CoV-2 スパイクタンパク質とコロナ後遺症については、関連記事をご参照ください ↓

「スパイクタンパク質」コロナ後遺症とワクチン後遺症

まとめ

ゼータ電位と血栓

 

ゼータ電位は、粒子の表面電荷と周囲の媒質との相互作用を反映しており、コロイド系の粒子間の引力すなわち粒子の凝集や凝固など安定性に影響を与えます。

細胞膜電位の影響は細胞外空間にまで及び、そこで細胞のゼータ電位を変化させることがわかっています。

細胞は膜電位の変化を利用して、細胞表面から近い距離にある他の細胞、生体分子、イオンとの相互作用を変えることができます。

 

血液はコロイド状粒子で構成されており、ゼータ電位を負電荷に保っています。

ゼータ電位の負電荷が減ってくると、静電反発力を減らして、コロイド溶液は凝集しやすくなります。

血液中に正に帯電したタンパク質が増加すると、ゼータ電位を低下させて赤血球同士の静電反発力を減らし、赤血球凝集を誘発します。

 

 

ゼータ電位と血栓