薬を飲まない理由 ベネフィットを自分で考えよう
現代の薬物療法は、血圧、コレステロール値、血糖値というような血液検査の数値で、薬を飲み続ける人が多くなってしまいました。
いわゆる高血圧、高脂血症、糖尿病に代表される生活習慣病です。
生活習慣病については、関連記事をご参照ください ↓
病名がついているので、これら自体が病気だと思っている方が多いのではありませんか?
実は心筋梗塞や脳卒中など死に直結する重篤な疾患にならないために(予防する目的で)、薬を飲んでいるのが本当の目的です。
胃癌の予防ためのピロリ菌の除菌、骨折予防のための骨粗鬆症治療薬、そして感染予防ためのインフルエンザワクチンや新型コロナウイルスワクチン、他にもいろいろあります。
特にこのように予防的な観点で投与される薬では、ベネフィットとリスクについて正しく評価することが非常に大切です。
2021年、特例承認による新型コロナウイルスワクチンでは、「自分でベネフィットとリスクを判断してください」と言われるようになりました。
そんなの自分じゃ判断できないよ!という人のために、ポイントをわかりやすく説明したいと思います。
情報にあふれた社会 何が正しい情報かわからない
現代社会はインターネットが普及して、誰でも様々な情報を入手することが可能になりました。
逆に情報が多過ぎて、いろいろな情報に振り回され、結局何が正しいのかわからない状態でもあります。
「どこかの偉い先生はすごい効果がある」と言っている
「またどこかの偉い先生は、危険だから絶対に接種していけない」と言っている
「友達が副作用が危ないからやめた方がいい」と言っている
「病院の先生が勧めるから間違いないんじゃないか」と家族は言っている
当たり前のことですが、未来というのは不確定要素しかありません。
未来の病気に対する予防を、単一要素で考えることは、実は非常に難しいことです。
人には寿命があり、少しずつ死に向かってゆく存在でもあります。必ず何かの原因で死んでいきます。
また100%全員に効果がある薬やワクチンというものは存在しません。
真のエンドポイントとは? その薬(ワクチン)の本当の目的は何なのか?
薬の有効性を判断できるのは、臨床試験しかありません。
実際に世の中で薬が使われだした後、薬を飲んでいたお陰で病気にならずに済んだのかどうかを、判断することは非常に困難です。
そのような単一要素で病気の発症が、決定されるわけではないからです。
臨床試験でその薬を、どのように評価しているのかがとても重要です。
そんなの当然、ちゃんと評価しているに決まっている!と思っている方が多いのではありませんか?
果たして本当にそうなのでしょうか?
血圧を下げる薬を飲んで、血圧が120以下にコントロールできました。
コレステロール値を下げる薬を飲んで、血中のコレステロール値が何%下がりました。
実はコレステロール値や血圧を下げることは、本当の目的(真のエンドポイント)ではありません。
血液検査の数値を代替エンドポイントとして、薬の有効性を評価しているだけです。
コレステロール値や血圧が高くても、何の症状がない人が多く、それ自体を病気と呼ぶことに賛否があります。
本当の目的は、発症したら死に直結する重篤な疾患(心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベント)を防止することです。
血圧やコレステロール値を下げる真のエンドポイントは、心血管イベントの発症予防
しかし新薬の臨床試験では、心血管イベントの発症予防のベネフィットが評価されずに、承認されてしまうケースが多いのです。
実は真のエンドポイントで薬の有効性を評価するのは、代替エンドポイントで有効性を評価するより、はるかに手間と時間がかかってしまうのです。
承認されてから数年後に、真のエンドポイントでの臨床試験結果がやっとでたら、あまり効果がなかったというケースもあります。
じゃあ血圧やコレステロール値が高い人の中で、心血管イベントを発症する人は何%ぐらいなのか?
薬を飲んだ人の何%が、それを予防できるのか?
そういう観点が抜け落ちてしまっています。
そもそも他の原因で死ぬ確率の方が、高いんじゃないのか?
単一要素で単一疾患の予防を考えていくことには、注意が必要なんです。
要素還元主義による単一病因論については、関連記事をご参照ください ↓
高血圧・2型糖尿病・高脂血症治療の真のエンドポイントについては、関連記事をご参照ください ↓
ワクチン効果って何? ものすごく効きそうに感じるのはなぜ?
新型コロナウイルスワクチンの本当の目的(真のエンドポイント)について、考えてみましょう。
PCR検査での陽性(感染)防止、抗体の産生は、代替エンドポイントになります。
PCR検査の陽性者のほとんどは無症状あるいは軽症で、それが真のエンドポイントではありません。
またPCR検査が、新型コロナウイルスCOVID-19を特定するために開発された検査ではなく、他のウイルス感染でも陽性になることは知られています。
ワクチンの真のエンドポイントは、COVID-19感染による重症化を防ぐことです。
PCR検査の陽性(感染)防止が、代替エンドポイントとなって、海外の臨床試験は実施されています。
PCR検査の陽性者を減少できれば、重症化する人も減少でき、それによって死ぬ人も減少できるというが、前提になっています。
実際にはまだ臨床試験は終了しておらず、中間報告としてワクチン2回目接種から半年後のワクチン効果が発表されています。真のエンドポイントである重症化の防止効果は、評価はされていません。
日本における臨床試験では、PCR検査の陽性(感染)防止すら評価されておらず、中和抗体の産生しか評価されていません。
つまり体内で中和抗体ができれば、感染防止につながるであろうということが、前提になっています。
90%のワクチン効果がありました!! ものすごい効果があるように、思ってしまうのではありませんか?
ワクチン効果とは、相対リスク減少率のことです。
実はそれだけの数字では、効果は評価できないものなのです。
相対リスク減少率、絶対リスク減少率、治療必要数については、関連記事をご参照ください ↓
わかりやすく例をあげて説明していきます。
A)ワクチン接種群、プラセボ群20,000人ずつで臨床試験を実施して、
ワクチン接種群の発症が10人、プラセボ群の発症が100人だった場合、ワクチン効果が90%になります。
B)ワクチン接種群、プラセボ群20,000人ずつで臨床試験を実施して、
ワクチン接種群の発症が200人、プラセボ群の発症が2,000人だった場合、ワクチン効果は90%となります。
ワクチン接種によって、感染するリスクが90% 減少しました(感染者数が1/10になっています)。
どちらもワクチン効果90%(相対リスク減少率が90%)となります。
ここで注目してほしいのは、ワクチン接種しなかったプラセボ群で、どれだけ感染するリスクがあるのかが大きく異なる点です。
A) ワクチン群 10/20,000人(0.05%) プラセボ群 100/20,000人(0.5%)
プラセボ群の感染率が0.5%(プラセボ群の99.5%は感染していない)
ワクチン接種により、どれくらいの人がベネフィットを得られるのかを計算してみましょう!
絶対リスク減少率 0.5%-0.05%=0.45% ワクチン必要数 1/0.0045 = 222人
222人ワクチン接種したら、そのうちの1人だけが感染予防のベネフィットを得られる結果です。その他221人にはベネフィットはなく、副作用など安全性のリスクを負うことになります。
B)ワクチン群 200/20,000人(1%) プラセボ群 2,000/20,000人(10%)
プラセボ群の感染率が10%
絶対リスク減少率 10%-1%=9% ワクチン必要数 1/0.09=約11人
11人ワクチン接種したら、そのうちの1人だけが感染予防のベネフィットを得られる結果です。その他10人にはベネフィットはなく、副作用など安全性のリスクを負うことになります。
実は感染率の大きさによって、得られるベネフィットはまったく異なってきます!
パンデミックの大きさが指標になってくるんです!
コミナティ筋注(ファイザー社COVID-19ワクチン)の有効性については、関連記事をご参照ください ↓
日本国内の新型コロナウイルス感染状況
厚生労働省ホームページ 新型コロナウイルス感染症について 国内の発生状況など
2021年6月4日現在、新型コロナウイルス感染症の国内の発生状況について
日本の総人口は約1億2536万人で計算しています(総務省 2021年5月人口推計より)
累積PCR検査陽性者(累積感染者数)は752,080人(日本の総人口の0.6%)
累積死亡者数 13,360人(陽性者の1.8%)(日本の総人口の0.01%)
累積での感染率(PCR検査陽性率)が0.6%という状況をみて、
自分がワクチン接種した場合の個人的なベネフィットは、もうおわかりいただけたと思います。
重症化による死亡を真のエンドポイントと考えた場合には、いずれ私たちは何かの原因で必ず死んでしまいます。
ウイルス感染症が原因で死ぬより、他の要因によって死ぬ確率の方が、圧倒的に大きいことがわかってきます。
やはり単一要素で単一疾患の予防を考えていくことには、注意が必要なんです!
ワクチン接種のリスクとベネフィットについては、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
まとめ
予防のために飲む薬、予防のためのワクチン接種などは、インターネットなどの情報を鵜呑みにせず、しっかり自分でベネフィットとリスクを判断する必要があります。
一般的に薬の評価を行なう場合は、ベネフィットとリスクを天秤にかけます。しかし有効性のベネフィットが感じられない場合には、副作用など安全性のリスクを負うだけとなります。
まずは本当の目的(真のエンドポイント)を考え、ベネフィットがあるのかを判断することが重要です。