「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

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「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

【この記事のまとめ】
炎症とは私たちの体を守るための生体防御反応であり、細胞・組織のホメオスタシス(恒常性維持)の働きによるものです。

くすぶった炎症が長期的に続いてしまう状態が「慢性炎症」であり、間質細胞である免疫細胞による掃除が炎症反応を起こしています。

免疫細胞による炎症反応が慢性化して、組織の細胞がうまく再生されないと、線維化が起こっていきます。線維化により組織が機能不全を起こして、さらに発癌するリスクが高まります。

本来、糖や脂肪は、エネルギー代謝を行うための大切なエネルギー源です。

しかし、過剰な糖や脂肪は、私たちにとって栄養素ではなく毒となってしまいます。それを掃除して除去するために、私たちの体は慢性炎症を起こしているのです。

「慢性炎症」という状態が、癌や心血管疾患、2型糖尿病、アルツハイマー型認知症など、生活習慣病の発症基盤となっています。

 

「慢性炎症は万病のもと」と言われています。

慢性炎症とはいったいどのような状態のことをいうのでしょうか?

 

肥満やメタボリックスシンドロームが、様々な疾患のリスク病態と言われるのは、この慢性炎症と深い関りがあるからです。

 

炎症 inflammationとは

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生体内に炎症を引き起こす組織異常には、擦過傷などの外傷、打撲、病原体侵入、化学物質刺激、新陳代謝異常による組織細胞の異常変化などがあります。

炎症とは身体の適応反応(防御反応)であり、生体のホメオスタシス(恒常性維持)のために最も重要なメカニズムの一つです。

免疫反応というのも、炎症反応の過程で出てくる反応です。

 

古代ローマの時代にセルサスによって、「発赤、発熱、腫脹、疼痛」が炎症の4徴候と呼ばれ、そしてガレノスが「機能障害」を加えて、炎症の5徴候と呼ばれています。

 

急性炎症

急性炎症とは、発赤・発熱・腫脹・疼痛の典型的な徴候を示す生体防御反応であり、一過性であることが多く、炎症反応のピークが過ぎると収束します。

傷害要因に対して血管と白血球が急速に応答し、血流の増加、血管透過性の亢進、白血球の遊走などを起こして、傷害要因の排除・傷害組織の修復により比較的短期間に収束します。

例えば、虫に刺されてその部分が赤く腫れて、それが数日で治まってくるような炎症のことです。

 

慢性炎症

慢性炎症の多くは、明らかな急性炎症の特徴を示さず、低レベルの炎症反応が長期間にわたって持続します。

くすぶり続ける軽度の炎症反応が、組織機能の障害だけでなく、長期的には線維化を起こし、不可逆的な臓器の機能不全をもたらしていきます。

この慢性炎症プロセスは、外的・内在的ストレスへの応答、すなわち細胞・組織のホメオスタシスを維持しようとする、生理的な炎症として引き起こされています。

動脈硬化、糖尿病、神経変性疾患、癌など様々な慢性疾患の進行には、この慢性炎症が関わっていると考えられています。

 

慢性炎症は間質細胞が鍵

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臓器、組織において、実質とはその臓器、組織の機能の中心を担っている部分であり、それ以外の部分が間質と呼ばれています。

例えば、肝臓であれば、肝細胞が実質細胞であり、脂肪組織であれば、脂肪細胞が実質細胞となります。

 

間質細胞

間質細胞には、好中球や樹状細胞、マクロファージなど免疫系の働きをする細胞、毛細血管を構成する血管内皮細胞、組織の修復をする線維芽細胞などがあります。

 

実質細胞と間質細胞は、お互いに様々なやりとりを行っており、密接な相互作用をしています。

慢性炎症では、実質細胞と間質細胞の間で、炎症を収束させようとするやりとりが常にある状態が続きます。

炎症性メディエーターである、サイトカインやケモカインなどが分泌され続けてしまうのです。

 

炎症が続いて実質細胞が死んだ場合、間質細胞が死んだ細胞を排除し、新しい細胞が再生するまでに、線維芽細胞などによって線維化され、細胞外基質(細胞外マトリックス)が形成されます。

 

細胞外マトリックスについては、関連記事をご参照ください ↓

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炎症が収束する場合は、ここで細胞が再生して、細胞外基質は溶けるという過程を経て修復します。

炎症を治すために免疫細胞などが働き、酸素を取り込むために血管を呼び込んだり、新たな血管を形成(血管新生)して、組織の再生が起こるのを助ける働きをします。

しかし、このプロセスが正常に終わらず、細胞の再生が間に合わなければ、細胞外マトリックスができた部位が広がって固定化されてしまいます。

こうして破壊された組織に線維化が起こり、不可逆的な慢性炎症の状態が続いてしまうのです。

肝硬変の線維化や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の線維化は、このような過程で起こっています。

「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

 

肥満による慢性炎症

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肥満が生活習慣病のリスク病態になる要因は、慢性炎症と大きな関係があります。

肥大化した脂肪組織では、TNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインや、MCP-1などのケモカインの産生が増える一方、アディポネクチンなどの抗炎症性サイトカインの産生が減少します。

脂肪細胞のまわりにマクロファージが集まり、炎症性サイトカインを刺激すると同時に、脂肪細胞においては脂肪分解が促進されます。

細胞死した脂肪細胞を免疫細胞が取り囲んで貪食・処理し、その結果、脂肪組織の線維化が起こり、アディポサイトカインの産生調節機能が障害されて、炎症が慢性化していきます。

 

アディポサイトカインについては、関連記事をご参照ください ↓

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脂肪細胞の線維化が進行すると、脂肪組織の脂肪蓄積能が低下していきます。

脂肪組織で溜められなかった脂肪は、肝臓などへの内臓脂肪(異所性脂肪)の蓄積につながっていきます。このようにして脂肪肝が誘発されています。

脂肪肝では、肝実質細胞の中に脂肪が溜まり、黄色く見えるようになります。このとき肝実質細胞は、肥満における脂肪細胞と同様に実質細胞としての機能不全に陥っています。

「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

 

糖化による慢性炎症

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血中に過剰な糖が長い間存在すると、体内のあちこちでタンパク質と結合して、終末糖化産物 Advanced Glycation End Products(AGEs)となります。

AGEsの蓄積は、さまざまな組織や細胞に障害を及ぼします(糖化による糖毒性)。

AGEsが受容体であるRAGE(Receptor for AGEs)と結合すると、細胞シグナルを活性化し、炎症性サイトカイン生成を惹起して、マクロファージにより処理され炎症反応が起こります

AGEsもまた慢性炎症を引き起こす原因となっているのです。

 

AGEsレベルの上昇は、糖尿病とアルツハイマー型認知症の共通の特徴であり、そのためアルツハイマー型認知症は第3の糖尿病(脳内の糖尿病)とも呼ばれています。

 

ミクログリアは脳の免疫細胞であり、神経細胞外に放出されたアミロイドβを異物として認識・貪食しています。

AGEsにより、ミクログリアが刺激されて活性化して、炎症誘発因子の過剰な放出により、神経炎症反応を導きます。

 

2型糖尿病やインスリン抵抗性については、関連記事をご参照ください ↓

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まとめ

「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

 

炎症とは私たちの体を守るための生体防御反応であり、細胞・組織のホメオスタシス(恒常性維持)の働きによるものです。

しっかり炎症反応が起こって、細胞・組織が再生されることで、私たちの体は治癒していきます。

くすぶった炎症が長期的に続いてしまう状態が「慢性炎症」であり、間質細胞である免疫細胞による掃除が炎症反応を起こしています。

免疫細胞による炎症反応が慢性化して、組織の細胞がうまく再生されないと、線維化が起こっていきます。線維化により組織が機能不全を起こして、さらに発癌するリスクが高まります。

 

本来、糖や脂肪は、エネルギー代謝を行うための大切なエネルギー源です。

しかし、過剰な糖や脂肪は、私たちにとって栄養素ではなく毒となってしまいます。それを掃除して除去するために、私たちの体は慢性炎症を起こしているのです。

「慢性炎症」という状態が、癌や心血管疾患、2型糖尿病、アルツハイマー型認知症など、生活習慣病の発症基盤となっています。

 

「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク