自然治癒力を高める「つながり・循環」
本来、私たちには自然治癒力というものが備わっています。
「〇〇によって自然治癒力を高めて、病気を治しましょう」という言葉は非常によく使われるようになりました。
しかし、自然治癒力を高めるというのは、いったい具体的にどういうことなのでしょうか?
そもそも自然治癒力が低下しているから、病気が治らないのでしょうか?
自然治癒力を高めるとは?
私たちは多くの場合、機械論的な考え方で、静的に病気や健康というものを捉えています。
普段ない不都合な症状が身体に現れると、私たちはそれを病気、すなわち異常(エラー)が発生したと認識しています。
つまり、病気や健康というものを、静的に二分して認識していることが多いのです。
急性疾患における自然治癒力では、回復して元の状態に戻ることを考え、「静的な病気・健康」を捉えて対応することができます。
機械論については、関連記事をご参照ください ↓
一方、慢性疾患における自然治癒力を考える場合には、「静的な病気・健康」ではなく、「動的な病気・健康」を捉える必要があります。
動的な健康では、病気の症状は異常(エラー)ではなく、ホメオスタシスによる自己調整の結果と捉えます。
病気、治癒そして健康、どれも連続した変化の過程であり、複雑な適応システムによるダイナミクス(動的)の結果が、私たちの健康状態をつくりだしています。
「静的な健康・動的な健康」、ホメオスタシスについては、関連記事をご参照ください ↓
ホメオスタシスによる動的平衡については、関連記事をご参照ください ↓
慢性疾患に多く見られる慢性炎症は、治癒反応や免疫反応が慢性的に起っている状態となります。
慢性疾患を改善するためには、病気・健康の動的平衡を変化させることが重要となります。
慢性疾患における自然治癒力を高めるということは、内部環境・外部環境の「つながり・循環」にアプローチします。
慢性炎症については、関連記事をご参照ください ↓
身体内部のつながり・循環
私たちが生き続けるためには、ホメオスタシスにより秩序ある一定の状態が保たれる必要があります。
また、私たちが生命活動を営むためには、エネルギーが必要になります。
代謝というのは、生体内での化学反応によって、エネルギーを生み出す仕組みのことです。化学反応全体が1つにつながっています。
エネルギー代謝については、関連記事をご参照ください ↓
また、ホメオスタシスを働かせるためには、連続性をもつネットワークが必要になります。
近年、注目されるようになった、ファシア(fascia)は、細胞外マトリックスと呼ばれる結合組織のことです。
狭義の筋膜(myofascia)ではなく、筋膜や骨膜、そして内臓・神経・血管など様々な組織を包んでいる膜です。
細胞外マトリックス、ファシアについては、関連記事をご参照ください ↓
ファシアは、体の各部位を包み込んで支えるという特徴から、体の内外と通信するための様々なツールを備えています。
ファシアのネットワークは、機械的・電気的情報伝達を行い、神経・血液・リンパ液の働きに大きな影響を与え、体内の物質循環(エネルギー代謝)にも関わってきます。
恒常性を維持するために必要な神経・血液・リンパ液の働きは、結合組織であるファシアの機能に支えられています。
ファシアのネットワークを調整することで、身体内部のつながり・循環にアプローチすることができます。
ファシアの機械的情報伝達については、関連記事をご参照ください ↓
ファシアの電気的情報伝達については、関連記事をご参照ください ↓
液体ファシアについては、関連記事をご参照ください ↓
外部環境とのつながり・循環
私たちは、皮膚に覆われた内側の身体だけで生命を維持しているわけではありません。
私たちは閉鎖系ではなく開放系、すなわち外部環境とのつながり・循環の中に生きています。
呼吸(外呼吸)による酸素と二酸化炭素のガス交換を行い、エネルギー代謝を行いながら食事・排泄によって外部と物質循環を行っています。
食べたものが体の中で上手く代謝できなければ、逆に不要な物質をとなって処理しなければならなくなり、慢性炎症を起こす原因になります。
呼吸(内呼吸・外呼吸)については、関連記事をご参照ください ↓
食事については、関連記事をご参照ください ↓
腸を含む消化管は体内臓器ですが、口から肛門につながる1本の管であり、常に外界とつながっています。
そのため、消化管腔内は体の内側にある体外と捉えることができます。
私たちの腸内、口腔、鼻腔、皮膚、膣などには、数百兆個の常在菌が存在し、これらの微生物との共生が私たちに大きな影響を与えています。
細菌叢(マイクロバイオーム)については、関連記事をご参照ください ↓
また、身体の周辺空間は、ペリパーソナルスペース(脳の自己領域)と呼ばれ、そこで私たちは内受容と外受容の感覚統合を行っています。
私たちの脳は、皮膚で覆われた内側を自己と認識しているのではなく、ペリパーソナルスペースも自己と認識しています。
すなわち、常に周りの人や空間の環境に大きな影響を受けています。
ペリパーソナルスペースについては、関連記事をご参照ください ↓
また、私たち人間は社会的な動物であり、人や社会とのつながりによって社会神経が活性化することで、安心・安全に生きていくことができます。
社会神経、ポリヴェーガル理論については、関連記事をご参照ください ↓
病気・健康状態の動的平衡を変化させるためには、身体内部のつながり・循環だけでなく、外部環境とのつながり・循環にもアプローチすることが重要となります。
まとめ
急性疾患における自然治癒力では、回復して元の状態に戻ることを考え、「静的な病気・健康」を捉えて対応することができます。
一方、慢性疾患における自然治癒力の場合には、「静的な病気・健康」ではなく、「動的な病気・健康」を捉える必要があります。
病気、治癒そして健康、どれも連続した変化の過程であり、複雑な適応システムによる動的な結果が、私たちの健康状態をつくりだしています。
慢性疾患を改善するためには、病気・健康の動的平衡を変化させることが重要となります。
慢性疾患における自然治癒力を高めるということは、内部環境・外部環境の「つながり・循環」にアプローチします。
ホメオスタシスを働かせるためには、連続性をもつネットワークが必要になり、神経・血液・リンパ液の働きは、結合組織であるファシアの機能に支えられています。
ファシアのネットワークは、情報伝達(機械的・電気的情報伝達)を行い、神経・血液・リンパ液の働きに大きな影響を与え、体内の物質循環(エネルギー代謝)にも関わってきます。
ファシアのネットワークを調整することで、身体内部のつながり・循環にアプローチすることができます。
私たちは閉鎖系ではなく開放系、すなわち外部環境とのつながり・循環の中に生きています。
病気・健康状態の動的平衡を変化させるためには、身体内部のつながり・循環だけでなく、外部環境とのつながり・循環にもアプローチすることが重要となります。