「健康と病気」動的な複合適応状態

「健康と病気」動的な複合適応状態

「健康と病気」動的な複合適応状態

【この記事のまとめ】
健康や病気というのは、身体的、社会的、感情的、認知的領域間の動的な多次元相互作用から生じる状態であります。

複雑な適応システムによるダイナミクス(動的)の結果が、健康状態をつくりだします。

本来は部分的な症状によって、病気や健康というものを二分して評価することはできないものです。

ダイナミクス(動的)健康とは、要素還元的な機械論ではなく、全体論での評価となります。

複雑な生物学的システムを持つ人間は、老化するにつれて少しずつ適応能力を失っていきます。

老化やそれに伴なう疾患の蓄積は、多様性の喪失による最適な安定性が失われた状態をつくりだします。

それがフレイルとなり、さらに別のシステムに移行してエントロピーの増加を引き起こします。

環境ストレスよる視床下部ー下垂体-副腎皮質軸 (HPA軸)の反応が、免疫システムを調整しています。

炎症性サイトカインが優位になると、ほとんどの疾患の発症を促進する慢性炎症を引き起こしています。

 

私たちの多くは、体に何かこれまでなかった症状がでてきた場合に、それを異常(エラー)と認識して病気だと思っています。

健康と病気の状態を二分して評価することが本当に正しいのでしょうか?

 

「健康と病気」動的平衡

「健康と病気」動的な複合適応状態

 

私たちは機械論的な考え方によって、身体が何か異常のある状態に変化した時に、それを「病気」の症状と認識しています。

身体のある部分に異常(エラー)が発生したので、それを修復しないといけないと思ってしまうのです。

つまり病気や健康というものを、静的に二分して認識していることが多いのです。

 

また機械論によって、私たちの身体は固定された物質のように思われています。

しかし、身体を構成している要素は絶え間なく分解され、食事によって摂取した栄養素により作り直され、常に新陳代謝を繰り返しています。

私たちの身体は決して固定されることはなく、代謝(異化と同化)によってエネルギーを生み出し、生命活動を続けています。

 

機械論については、関連記事をご参照ください ↓

「原因不明の痛みや不調」検査で異常なしとは?

代謝と生命活動については、関連記事をご参照ください ↓

「代謝と生命活動」異化と同化とエネルギー

 

病気・健康というのは、連続した動的な変化の流れでしかありません。

複雑な適応システムによるダイナミクス(動的)の結果が、健康状態をつくりだしています。

 

傷ついたり、一時的にバランスを大きく崩したとしても、バランスを調整して復元する力があり、それが自然治癒力と呼ばれるものです。

 

静的な健康・動的な健康については、関連記事をご参照ください ↓

【静的な健康】と【動的な健康】

自然治癒力・病気については、関連記事をご参照ください ↓

「なぜ治らないのか?」自然治癒力の働きとは何か?

「健康と病気」非線形複合適応ダイナミクス

「健康と病気」動的な複合適応状態

Health and Disease Are Dynamic Complex-Adaptive States Implications for Practice and Research

Front Psychiatry. 2021 Mar 29;12:595124. doi: 10.3389/fpsyt.2021.595124.

「健康と病気」動的な複合適応状態

 

健康が身体的、社会的、感情的、認知的領域間の動的な多次元相互作用から生じる経験的な状態である場合、人の健康は全体としてしか評価できません。

つまり本来は部分的な症状によって、病気や健康というものを評価はできないものなのです。

ダイナミクス(動的)健康とは、要素還元的な機械論ではなく、全体論での評価となります。

 

要素還元主義や全体論については関連記事をご参照ください ↓

「要素還元主義による単一病因論」ピロリ菌は胃癌の原因なのか?

 

Ashby の必須多様性の法則

複雑な生物学的システムを持つ人間は、老化するにつれて少しずつ適応能力を失っていきます。

Ashby の言葉で言うなら、必要な多様性を失っていきます。

老化の軌跡およびそれに伴なう疾患の蓄積は、ある時点での「最適な安定性」の喪失によって起こるプロセスであり、一時的なホメオキネティクスによる「新しい状態」につながります。

ホメオキネティクスによる安定性の喪失、それに伴う疾患の発症の増加、そしてフレイルから別のシステム特性に移行して、エントロピーの増加へとつながります。

 

フレイルについては、関連記事をご参照ください ↓

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

エントロピーについては、関連記事をご参照ください ↓

「デトックス」エントロピーと生命のつながり

 

炎症カスケード

炎症経路は、私たちの体内機能のほとんどを調節しています。

視床下部ー下垂体-副腎皮質軸 (HPA軸)は、免疫細胞機能を調節するコルチゾール、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびアセチルコリンのレベルを制御します。

それらの刺激に応じて、免疫細胞は炎症誘発性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインを放出します。

 

食欲不振/悪液質、認知的変化、疲労、抑うつ気分、痛みなどのいわゆる症状は、神経膠の炎症と高レベルの脳由来サイトカインの放出を引き起こす末梢炎症性サイトカインによって主に引き起こされています。

急性疾患の回復段階では、抗炎症性サイトカインが脳の炎症を逆転させ、患者は病気になる前の状態に戻ります。

しかし、慢性疾患に関連する慢性的なサイトカインレベルの上昇は、慢性的な神経膠細胞の炎症活動を引き起こし、影響を受けた患者の気分の低下と疲労レベルの上昇をもたらします。

 

HPA軸やコルチゾールについては、関連記事をご参照ください ↓

「ストレスとホルモン」副腎疲労症候群とは?

「コルチゾール」ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは?

健康転帰のためのつながり

「健康と病気」動的な複合適応状態

There is More to ‘Making Connections to Improve Health Outcomes’

Glob Adv Health Med. 2022 Sep 21;11:2164957X221126675. doi: 10.1177/2164957X221126675.

 

健康と病気は「存在のパターン化された状態」であり、マクロの外部環境から生理学的環境に至るまで、多くの異なる要因の相互依存性に大きく依存していています。

健康と病気は二分法の実体として認識されるものではありません。

 

環境ストレッサーが HPA 軸カスケードをどのように急激に誘発するか、持続的な環境ストレスが蓄積されてアロスタティック負荷の上昇と免疫システムの調節がもたらされます。

慢性的なストレスは、コルチゾールの持続的な増加を引き起こし、その結果、コルチコステロイド耐性と免疫系の調節不全を引き起こします。

炎症性サイトカインの優位性は、ほとんどすべての疾患の発症を促進する慢性炎症状態を引き起こします。

 

HPA軸、コルチゾールについては関連記事をご参照ください ↓

「ストレスとホルモン」副腎疲労症候群とは?

慢性炎症については、関連記事をご参照ください ↓

「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

まとめ

「健康と病気」動的な複合適応状態

 

健康や病気というのは、身体的、社会的、感情的、認知的領域間の動的な多次元相互作用から生じる状態であります。

複雑な適応システムによるダイナミクス(動的)の結果が、健康状態をつくりだします。

部分的な症状によって、病気や健康というものを二分して評価することはできないものです。

ダイナミクス(動的)健康とは、要素還元的な機械論ではなく、全体論での評価となります。

 

複雑な生物学的システムを持つ人間は、老化するにつれて少しずつ適応能力を失っていきます。

老化やそれに伴なう疾患の蓄積は、多様性の喪失による最適な安定性が失われた状態をつくりだします。

それがフレイルとなり、さらに別のシステムに移行してエントロピーの増加を引き起こします。

 

環境ストレスよる視床下部ー下垂体-副腎皮質軸 (HPA軸)の反応が、免疫システムを調整しています。

免疫細胞は炎症誘発性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインを放出しています。

炎症性サイトカインが優位になると、ほとんどの疾患の発症を促進する慢性炎症を引き起こしています。

 

「健康と病気」動的な複合適応状態