「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

【この記事のまとめ】
自律神経システムは、交感神経と副交感神経のバランスだけなく、他者とのつながりをつくる社会神経によって大きく影響を受けています。

私たちが他者とのコミュニケーションがとれて、社会神経(腹側迷走神経複合体)が活性化している時には、無意識下で「安全」を感じており、交感神経による過剰な闘争・逃走反応を抑えることができます。

「自粛」のように人と人との関係性、社会との関係性が希薄になることは、ウイルスを弱らせると同時に、健全な人間の生命活動を弱らせる原因になります。

私たち人間は社会的な動物であり、人や社会とのつながりがなければ、安心・安全に生きていくことができません。

 

新型コロナウイルス感染症対策として、人との接触をできるだけ減らす政策がとられています。

ウイルス感染のリスクを下げるだけでなく、人とのつながり、社会とのつながりを減少させることにもなります。

 

自律神経系は交感神経と副交感神経のバランスによって、身体の恒常性を維持するシステムとして考えられてきましたが、さらに他者と関わるための社会神経が、自律神経に大きな影響を与えていることがわかってきました。

 

人と人のコミュニケーションが減少することは、私たちの自律神経が過剰なストレスにさらされる原因になっています。

 

ポリヴェーガル理論 Polyvagal Theory

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

 

自律神経系の交感神経・副交感神経という分類は、神経の機能や作用の違いで分類した生理学的な分類です。

解剖学的には、副交感神経の働きの大部分を担っているのが、第10脳神経である迷走神経になります。

 

自律神経については、関連記事をご参照ください ↓

「自律神経失調症」脳のアイドリングによる脳疲労

 

迷走神経

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

ポリヴェーガル理論 人間にとって安全とは何か?Studio Unus より引用

 

脳から直接頭部内にでてきる12対の脊髄神経のことを脳神経と呼びます。

第10脳神経である迷走神経は、脳幹(延髄)に神経核を持ち、頸部を経由してたくさんの内臓につながっています。迷走神経を通じて、胃腸や心臓・肺など内臓の状態が脳に伝えられています。

 

副交感神経の80%を占める迷走神経には、進化の過程で大きく2種類あることがわかりました。

①有髄性の迷走神経(腹側迷走神経):主に横隔膜より上の臓器の制御
②無髄性の迷走神経(背側迷走神経):主に横隔膜より下の臓器の制御

 

この2つの迷走神経と交感神経は、系統発生学的には、無髄迷走神経⇒交感神経⇒有髄迷走神経の順に、生まれてきました。新しい神経系が古い神経系を抑制するようにできています。

 

ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)

私たち人間は社会的動物であり、他者とコミュニケーションをとり交流する能力に長けています。

ポリヴェーガル理論の提唱者ポージェスは、環境への対応や危機管理のシステムとして、自律神経系の中に、社会神経系という概念を取り入れました。

社会神経系は、三叉神経、顔面神経、舌咽神経、副神経と迷走神経からなります。

 

ポリヴェーガル理論では、3つの神経系(交感神経と2つの迷走神経)によって、副交感神経系、交感神経系、社会神経系の三層構造になっていると考えています。

自分のおかれている場が、「安全」か「危険」か「生命の危機」であるのかを無意識下で察知して、それぞれの状況に応じた自律神経システムが反射的に働くと考えられています。

 

①社会神経系(腹側迷走神経複合体) 

「安全」への反応として、社会的コミュニケーション反応を生み出します

②交感神経系

「危険」への反応として、闘争・逃走反応を生み出します

②副交感神経系(背側迷走神経複合体)

「生命の危機」への反応として、凍りつき反応(不動化・シャットダウン)を生み出します

 

トラウマ形成と海馬の機能については、関連記事をご参照ください ↓

「記憶と自己」海馬とトラウマとアルツハイマー

恒常性維持のために、脳は外部と身体内部の情報を統合してイメージとして把握しています。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

身体と空間の自己イメージ「ぺリパーソナルスペース」

トラウマ解放については、関連記事をご参照ください ↓

「トラウマ解放」脳の自己イメージを書き換える

自律神経の調整

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

 

私たちが他者とのコミュニケーションがとれて、社会神経(腹側迷走神経複合体)が活性化している時には、無意識下で「安全」を感じており、交感神経による過剰な闘争・逃走反応を抑えることができます。

社会神経がうまく機能して、脳の過剰なアイドリングを抑制して、交感神経と副交感神経のバランスがうまく調整されているのです。

脳のアイドリング・自律神経失調症については、関連記事をご参照ください ↓

「自律神経失調症」脳のアイドリングによる脳疲労

しかし、社会神経がうまく働いていない状態では、ストレスが増えて交感神経の過緊張状態が続いてしまいます。

それに耐えれなくなると「生命の危機」を感じて、副交感神経(背側迷走神経複合体)が交感神経に急ブレーキをかけて、シャットダウン(凍り付き反応)を行い自己防衛します。

体がだるくて朝起きれなかったり、重度なうつ状態でやる気がでなかったりするのは、副交感神経のシャットダウンによる自己防衛反応の現れです。

 

人と会いたくなくなったり、人とコミュニケーションするのが面倒だと感じる時は、社会神経がうまく機能していない状態なので要注意です。

 

ストレスとホルモン、副腎疲労症候群については、関連記事をご参照ください ↓

「ストレスとホルモン」副腎疲労症候群とは?

ストレスの伝染「セカンドハンド・ストレス」については、関連記事をご参照ください ↓

「セカンドハンド・ストレス」ストレスの伝染

コロナ禍の弊害 つながりの減少

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

 

常時マスクをしていることで、呼吸が浅くなったり、口呼吸の割合が増えています。浅い呼吸では内呼吸(細胞呼吸)が行うことができず、交感神経を活性化させる原因になります。

またマスクをしていることで、笑顔など顔の表情がわかりづらくなり、以前のように意識しなくなった方も多いと思います。それによってコミュニケーションするための社会神経の機能が低下していきます。

さらに自粛によって、人と接触してコミュニケーションをとる機会も減少しており、社会神経の機能がますます低下していきます。

高齢社会での社会的フレイルの問題については、関連記事をご参照ください ↓

フレイルとミトコンドリア機能障害「サルコペニアと廃用症候群」

 

私たちの多くは、人とのつながりが減ることで、無意識下で安心・安全を感じにくくなっています。脳のアイドリングによる交感神経の過緊張を起こしやすくなっています。

 

人と目を合わせて話をしたり、声のトーンを調整したり、笑顔を作ったり、誰かと食事に行ったり、人とつながり社会交流することは、社会神経を活性化してストレスの解消に役立っています。

 

人や動物などとの触れ合い、楽しい会話や家族との団らんは、オキシトシンの分泌を増加して、セロトニン神経を活性化して、ストレス反応を抑えてくれます。

オキシトシンやセロトニンについては、関連記事をご参照ください ↓

「概日リズムとホルモン分泌」セロトニン・メラトニン

 

呼吸法や瞑想法のセルフケアにより、脳のアイドリング状態を解除することができます。詳しくは関連記事をご参照ください ↓

「つながりの呼吸」自律神経を整える

 

重度なうつ症状など、副交感神経のシャットダウンによる自己防衛反応がでてしまった場合には、自分一人で解決しようとせずに誰かのサポートを受けることが重要です。

誰かにサポートしてもらうことで、自分を「安全」な場に置くことができ、社会神経の機能を高めていくことができるからです。

 

まとめ

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる

 

自律神経システムは、交感神経と副交感神経のバランスだけなく、他者とのつながりをつくる社会神経によって大きく影響を受けています。

ポリヴェーガル理論では、3つの神経系(交感神経と2つの迷走神経)によって、副交感神経系、交感神経系、社会神経系の三層構造になっていると考えています。

社会神経がうまく機能して、脳の過剰なアイドリングを抑制して、交感神経と副交感神経のバランスがうまく調整されています。

 

「自粛」のように人と人との関係性、社会との関係性が希薄になることは、ウイルスを弱らせると同時に、健全な人間の生命活動を弱らせる原因になります。

私たち人間は社会的な動物であり、人や社会とのつながりがなければ、安心・安全に生きていくことができません。

 

「人とのつながり」「社会とのつながり」自律神経を安心させる