ストレスとホルミシス

ストレスとホルミシス

ストレスとホルミシス

【この記事のまとめ】
ストレス反応・炎症反応・エネルギー代謝は相互に関連したシステムであり、常に変化する環境条件に適応して、体の恒常性を維持するために必要不可欠なものです。

この適応の最終的な結果は、ストレス因子と誘発された反応によってそれぞれ生み出される、負(有害)効果と正(有益)効果のバランスによって決まります

「ホルミシス」とは、低用量の「ストレッサー」が生物の適応を誘導し、よりよく抵抗できるようにするという、長い間観察されてきた生物学的現象を指します。

大量では有害な作用をするものが、わずかな量だと人体に生理的な刺激を与えて活発化させる現象を、ホルミシス効果と呼んでいます。

つまり、ホメオスタシスを乱す軽度のストレスが、ホメオスタシスに対抗するための有益な適応をもたらします。

 

一般的にストレスと言えば、私たちの体にとって悪いイメージがありますが、実はそうではありません。

適度なストレスは、私たちの抵抗力を高めて、有益な効果を与えてくれます。

 

Hormesis in Health and Chronic Diseases

Trends Endocrinol Metab. 2019 Dec;30(12):944-958. doi: 10.1016/j.tem.

Inflammaging, hormesis and the rationale for anti-aging strategies

Ageing Res Rev. 2020 Dec:64:101142. doi: 10.1016/j.arr.2020.101142

ストレス反応

ストレスとホルミシス

 

ストレスとは、外部または内部の影響によって生物の恒常性が脅かされていると認識された状態です。

ストレス反応というのは、急性の課題に直面した場合の適応反応で、代謝変化を引き起こして、交感神経反応(闘争・逃走反応)を行うために必要なエネルギーを提供してくれます。

視床下部-下垂体-副腎 (HPA 軸)によってコルチゾールと、交感神経系によってカテコールアミン(ノルエピネフリン・エピネフリン)が放出され、特に行動、代謝、心血管、免疫、胃腸の機能が調節されます。

 

ストレス反応とホルモン分泌、HPA軸については、関連記事をご参照ください ↓

「ストレスとホルモン」副腎疲労症候群とは?

コルチゾール(ストレスホルモン)については、関連記事をご参照ください ↓

「コルチゾール」ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは?

 

急性で激しいストレスは、食欲不振を引き起こし、摂食抑制と体重減少を引き起こします。

一方、慢性的なストレスは、過食、内臓脂肪の増加、体重増加を引き起こし、肥満を引き起こす可能性があります。

ただし2 種類の反応は、同時に存在する可能性があり、代謝の結果は個人の特性によって異なります。

 

ストレス反応・免疫反応(特に炎症)・エネルギー代謝は、相互に関連したシステムであり、体の恒常性維持には必要不可欠なものです。

 

炎症については、関連記事をご参照ください ↓

「慢性炎症」肥満と糖化によるリスク

エネルギー代謝については、関連記事をご参照ください ↓

「代謝と生命活動」異化と同化とエネルギー

 

これらは常に変化する環境条件(病原体への曝露や組織の損傷、食糧不足や過剰、物理化学的ストレスなど)に適応するために、 3 つの相互接続されたシステムと考えられます。

この適応の最終的な結果は、ストレス因子と誘発された反応によってそれぞれ生み出される、負(有害)効果と正(有益)効果のバランスによって決まります。

反応の強さはトリガーの強さに依存し、それ自体が正の効果と負の効果の両方を持つ可能性があります。

このような複雑なシナリオでは、「ホルミシス」が重要な概念となります。

 

ホルミシス理論によれば、軽度のストレスに繰り返しさらされると、脂肪組織、肝臓、脳、免疫系など、様々な臓器やシステムに有益な効果が引き起こされ、健康状態が全体的に改善 (またはより良く維持) されます。

また軽度で反復的な栄養ストレスは、カロリー制限、断続的な断食、地中海ダイエット などの健康を促進する食事パターンの順守と十分な身体活動の組み合わせによって、エネルギー代謝だけでなく炎症やストレス反応にも有益な効果をもたらす可能性があります。

老化もまた、適応反応 (エネルギー代謝、炎症反応、ストレス反応)の総合的な結果として考えることができます。

 

ストレスの伝染「セカンドハンドストレス」については、関連記事をご参照ください ↓

「セカンドハンド・ストレス」ストレスの伝染

ホルミシス

ストレスとホルミシス

 

「ホルミシス」とは、低用量の「ストレッサー」が生物の適応を誘導し、よりよく抵抗できるようにするという、長い間観察されてきた生物学的現象を指します。

古典的に、ホルミシスは毒物学者によって、「低用量の刺激/有益な効果」と、「高用量の阻害/毒性効果」の二相反応とも説明されています。

ストレスとホルミシス

Hormesis in health and chronic diseases

 

大量では有害な作用をするものが、わずかな量だと人体に生理的な刺激を与えて活発化させる現象を、ホルミシス効果と呼んでいます。

つまり、ホメオスタシスを乱す軽度のストレスが、ホメオスタシスに対抗するための有益な適応をもたらします。

 

ホメオスタシスについては、関連記事をご参照ください ↓

【静的な健康】と【動的な健康】

「発熱の症状とは?」ホメオスタシスをサポートする 

 

生命は完全に無害な環境では進化できず、ホルミシスストレスのは除去は、最適な機能からの緩やかな逸脱につながる可能性があります。

最適な健康状態で生きる能力には、ホルミシスの概念が含まれなければならないということになります。

 

幼少期のストレスはその後の人生での回復力を高める可能性があり、ストレスの欠如は脆弱性につながる可能性があります

多くのストレッサーは自然に発生し、健康な成長や恒常性維持に必要であり、これは「病気が健康への入り口である」ことを例示しています。

 

健康と病気の複合適応状態については、関連記事をご参照ください ↓

「健康と病気」動的な複合適応状態

まとめ

ストレスとホルミシス

 

ストレス反応・炎症反応・エネルギー代謝は相互に関連したシステムであり、常に変化する環境条件に適応して、体の恒常性を維持するために必要不可欠なものです。

この適応の最終的な結果は、ストレス因子と誘発された反応によってそれぞれ生み出される、負(有害)効果と正(有益)効果のバランスによって決まります

「ホルミシス」とは、低用量の「ストレッサー」が生物の適応を誘導し、よりよく抵抗できるようにするという、長い間観察されてきた生物学的現象を指します。

大量では有害な作用をするものが、わずかな量だと人体に生理的な刺激を与えて活発化させる現象を、ホルミシス効果と呼んでいます。

つまり、ホメオスタシスを乱す軽度のストレスが、ホメオスタシスに対抗するための有益な適応をもたらします。

 

軽度のストレスに繰り返しさらされると、脂肪組織、肝臓、脳、免疫系など、様々な臓器やシステムに有益な効果が引き起こされ、健康状態が全体的に改善 (またはより良く維持) されます。

生命は完全に無害な環境では進化できず、ホルミシスストレスのは除去は、最適な機能からの緩やかな逸脱につながる可能性があります。

幼少期のストレスはその後の人生での回復力を高める可能性があり、ストレスの欠如は脆弱性につながる可能性があります。

 

ストレスとホルミシス

 

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