グルココルチコイド「コルチゾール」ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とはグルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

【この記事のまとめ】
グルココルチコイド(コルチゾール)は、概日リズムによって、1日の基礎分泌量が日内変動するように調整されています。代謝調整、抗炎症作用・免疫調整作用などによって、私たちの日中の活動が支えられています。

ストレスなど緊急時には、基礎分泌量の10倍以上のコルチゾールが分泌されて、交感神経反応(闘争・逃走 反応)に備えるために、代謝系、神経系、循環器系へ働きかけています。

コルチゾールの分泌量は視床下部ー下垂体ー副腎皮質(HPA 軸)によるフィードバック機構で調節されています。また、体の局所の組織において、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)という酵素によって、活性型のコルチゾールと不活性型のコルチゾンの変換調節を行う仕組みがあります。

私たちの体は、平常時は甲状腺ホルモンによりミトコンドリアのエネルギー代謝を調整し、ストレスなど緊急時はコルチゾールによる解糖系による代謝調整が行われて、恒常性が維持されています。

過剰なストレスが続いて、コルチゾールの分泌が不足してしまうと、慢性炎症を引き起こして、動脈硬化など様々な疾患の原因や、免疫力の低下による感染症のリスクが高くなります。

 

ステロイド(ステロイドホルモン)と聞いて、皆さんがイメージするのは、グルココルチコイド(コルチゾール)の類似化合物を合成して開発したステロイド薬のことです。

強い抗炎症・免疫抑制作用を持ち、抗炎症薬や免疫抑制薬として様々な疾患の治療に用いられています。

ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)が、国内2番目に新型コロナウイルス感染症治療薬として承認され、重症者の死亡リスクを下げるといわれています。

 

グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の生理作用

グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

 

グルココルチコイド(糖質コルチコイド)は、副腎から分泌される主要なステロイドホルモンで、ストレスから生体を防御する働きがあり、私たちの生命維持には欠かすことができません。

グルココルチコイドは、グルコース(ブドウ糖)の代謝調節を行うことから、このように名付けられました。しかし、代謝系ばかりでなく、免疫系、神経系、循環系に対しても様々な作用を有しています。

ステロイドホルモンは、生体内ではコレステロールを原料として合成されています。

 

コレステロールのホルモン合成については、関連記事をご参照ください ↓

グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

 

グルココルチコイド(コルチゾール・コルチゾン)は、人体がストレスに対して反応する際に放出される主なホルモンです。

血圧や血糖値を上昇させ、解糖系による交感神経反応(闘争・逃走 反応)に備えるために、エネルギー代謝を調整します。

私たちの体が何らかのストレス刺激を受けると、脳のストレス中枢である視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)が分泌され、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌され、その刺激が副腎皮質に伝わり、コルチゾール(グルココルチコイド)が分泌されます。

コルチゾールの基礎分泌量は10㎎/日ですが、ストレスがかかると、その10倍以上のコルチゾールが分泌されています。

 

ストレスとコルチゾール(グルココルチコイド)については、関連記事をご参照ください ↓

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コルチゾールの分泌量は視床下部ー下垂体ー副腎皮質(HPA 軸)によるフィードバック機構で調節されています。

しかし過剰なストレスが持続しすぎると、HPA軸のダウンレギュレーションが起こり、脳下垂体からACTHが分泌されなくなり、コルチゾールの分泌量が低下します。

この脳疲労が起こってしまうと、ストレス時のコルチゾールの分泌だけでなく、概日リズムによる基礎分泌の低下を起こしてしまうのです。

 

ストレスと交感神経反応、脳疲労については、関連記事を記事をご参照ください ↓

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ダウンレギュレーションについては、関連記事をご参照ください ↓

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コルチゾールと概日リズム(サーカディアンリズム)

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コルチゾールの体内濃度は、脳にある体内時計によって1日の分泌パターンが調整されています。

早朝がピークになり、昼間は高く、夜間は低値となるように調整され日内変動しています。これを概日リズム(サーカディアンリズム)と言います。

 

概日リズムとホルモン分泌については、関連記事をご参照ください ↓

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「ストレスに反応して出るホルモン」のイメージが強いですが、体内時計により深夜から朝方にかけて分泌量が増加して、血糖値や血圧を高めて起床と起床後の活動準備をしてくれています。

抗ストレス作用、抗炎症作用、免疫調整作用などによって、私たちの日中の活動を支えています。

 

コルチゾールの免疫調整

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京都大学の研究 

Glucocorticoids Drive Diurnal Oscillations in T Cell Distribution and Responses by Inducing Interleukin-7 Receptor and CXCR4

 

コルチゾールが、Tリンパ球のサイトカイン受容体IL-7Rとケモカイン受容体CXCR4の発現量を夜間に高め、昼間に下げていることがわかっています。

これによって、Tリンパ球は昼間は血中にとどまり、夜間にリンパ組織に集まり活性化されて、免疫応答が行われる日内変動が起こっています。

コルチゾールが、生体内においてはTリンパ球の循環と応答の日内変動を制御することで、免疫機能を高める働きをしています。

 

コルチゾンとコルチゾール

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11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-hydroxysteroid dehydrogenase:11β-HSD)

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コルチゾン(不活性型)

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コルチゾール(活性型)

 

グルココルチコイドには活性型のコルチゾールと、不活性型のコルチゾンがあります。

コルチゾールの血中濃度はHPA軸によって制御されていますが、局所における濃度の制御は11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)という酵素が担っています。

11β-HSDにはⅠ型(11β-HSD1)とⅡ型(11β-HSD2)が存在します。

コルチゾールのコルチゾンへの不活性化は、大部分は腎臓で11β-HSD2によって行われています。

コルチゾンのコルチゾールへの活性化は、肝臓や脂肪組織などの組織を中止に11β-HSD1によって行われています。

つまりHPA軸による調整だけでなく、必要に応じて糖質コルチコイドの活性レベルを各組織で調整する仕組みがあるというわけです。

 

マクロファージによるコルチゾールへの活性化

ドイツのザールラント大学の研究

Altered glucocorticoid metabolism represents a feature of macroph-aging

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/acel.13156

 

老化によってマクロファージの活性が下がると、コルチゾールのホルモン量が低下することがわかっています。

マクロファージにはコルチゾンを活性型のコルチゾールに変換する働きがあります。

 

つまりマクロファージの活性が高くて、新陳代謝により体内掃除ができている状態(体内のエントロピーが低い)では、活性型のコルチゾールによって、炎症反応が抑えられているのです。

 

コルチゾールと甲状腺ホルモンのホメオスタシス

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グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

 

私たちのホメオスタシスにおいて、平常時には甲状腺ホルモンが主となって代謝調整を行い、ストレスなど緊急時にはコルチゾールが主となって代謝調整を行っています。

 

代謝と生命活動ついては、関連記事をご参照ください ↓

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コルチゾールは日中の活動を行うために必要不可欠ですが、ストレスにより過剰に分泌され続けると、甲状腺ホルモンT3の活性化を抑制して、新陳代謝を低下させます。

それがミトコンドリアの内呼吸によるエネルギー代謝を低下させて、酸化ストレスを上昇させます。

 

ミトコンドリアのエネルギー代謝については、関連記事をご参照ください ↓

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甲状腺ホルモンとミトコンドリアのエネルギー代謝については、関連記事をご参照ください ↓

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酸化ストレスについては、関連記事をご参照ください ↓

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また過剰なストレスが持続し、コルチゾールが過剰に分泌され続けると、やがてHPA軸のダウンレギュレーションにより、このコルチゾールの基礎分泌まで低下してしまいます。

副腎疲労症候群のように朝起きれなくなったりするのは、これが原因と考えられます。

 

副腎疲労症候群、HPA軸のダウンレギュレーションについては、関連記事をご参照ください ↓

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ミトコンドリアのエネルギー代謝が抑制されて、甲状腺ホルモンの活性型T3レベルが低下が起こり、新陳代謝が低下した状態では、マクロファージによる体内掃除が必要になります。

コルチゾールの分泌が不足すると、マクロファージは炎症性サイトカインの量を増やして、リンパ球など炎症性細胞を呼び寄せて慢性炎症を引き起こしています。

マクロファージが体内掃除するのは、エントロピーを維持するためのホメオスタシスによる反応です。しかし、それによって動脈硬化や様々な慢性疾患を引き起こし、免疫力の低下を招いています。

 

ミトコンドリアでのエネルギー代謝が回って、甲状腺ホルモの活性型T3レベルが上がると、マクロファージによる炎症性サイトカインの分泌を抑制して、炎症反応を止める働きをします。

ミトコンドリアのエネルギー代謝、甲状腺ホルモン、コルチゾール、マクロファージ、慢性炎症には一連の相関関係があります。

 

動脈硬化と慢性炎症については、関連記事をご参照ください ↓

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ステロイド薬(グルココルチコイド)の抗炎症・免疫抑制作用

グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

 

ステロイド薬(グルココルチコイド)は炎症を抑える作用を持っています。

この劇的に効く抗炎症作用が、ステロイド薬(グルココルチコイド)を一躍有名にしたのです。

ステロイド薬(グルココルチコイド)が炎症時のマクロファージに働くと、マクロファージからの炎症性サイトカインの産生を低下して、炎症を抑える作用を示します。

 

炎症反応というのは、体を守るための防御反応であり、生体のホメオスタシス(恒常性維持)のために重要な反応です。急性炎症と慢性炎症に区別されています。

免疫反応といのも、炎症反応の過程で起こってくる反応のことです。感染症というのは急性炎症を引き起こしています。

炎症反応は、体を修復するために起こしている反応であり、過剰に起り続けなければ、有益であって有害ではありません。

 

炎症反応については、関連記事をご参照ください ↓

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ステロイド(グルココルチコイド)はどんな炎症も抑えることができる、圧倒的に強い作用を有しています。

炎症を抑えるということは、免疫反応を止めるという事でもあります。強力な炎症抑制作用かつ免疫抑制作用になってしまうと考えられます。

 

合成ステロイド薬

グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

図は 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学 より引用

 

コルチゾン(コートン)、コルチゾール(コートリル)だけでなく、プレドニゾロン(プレドニン、プレドニゾロン)、メチルプレドニゾロン(メドロール)、デキサメタゾン(デカドロン)、ベタメタゾン(リンデロン)など、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)を化学修飾した化合物が経口ステロイド薬として開発されています。

また、点鼻薬・点眼薬・吸入薬・皮膚外用薬など、飲み薬だけでなく外用剤としても、たくさんの外用ステロイド薬が開発されています。

ステロイド薬(グルココルチド)は、この強い抗炎症作用・免疫抑制作用から、様々な疾患・病態で治療薬として用いられています。

 

しかし抗炎症・免疫抑制作用だけなく、糖質代謝・脂質代謝・タンパク質代謝、水・電解質代謝、骨・カルシウム代謝、神経系、循環器系など、私たちの体の多くの機能にかかわっています。

そのため長期的な服薬には、その体全体に対する影響を十分に考慮しないといけません。

 

ステロイドは副作用が怖いというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、それは様々な作用を有しておいる為であり、副作用だけが強いというわけではありません。

効果(主作用)と副作用の関係については、関連記事をご参照ください ↓

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まとめ

グルココルチコイド「コルチゾール」 ステロイドの抗炎症・免疫抑制作用とは

 

グルココルチコイド(コルチゾール)は、私たちの体にとって欠かすことができない重要なホルモンの1つです。

概日リズムによって、1日の基礎分泌量が日内変動するように調整され、代謝調整、抗炎症作用・免疫調整作用などによって、私たちの日中の活動が支えられています。

ストレスなど緊急時には、基礎分泌量の10倍以上のコルチゾールが分泌されて、交感神経反応(闘争・逃走 反応)に備えるために、代謝系、神経系、循環器系へ働きかけています。

コルチゾールの分泌量は視床下部ー下垂体ー副腎皮質(HPA 軸)によるフィードバック機構で調節されています。このHPA軸の機能障害によって、基礎分泌が低下してしまうと、副腎疲労症候群のような症状を示して、日中の活動を行えなくなってしまいます。

また、体の局所の組織において、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)という酵素によって、活性型のコルチゾールと不活性型のコルチゾンの変換調節を行う仕組みがあります。

 

私たちの体は、平常時は甲状腺ホルモンによりミトコンドリアのエネルギー代謝を調整し、ストレスなど緊急時はコルチゾールによる解糖系による代謝調整が行われて、恒常性が維持されています。

過剰なストレスが続いて、コルチゾールの分泌が不足してしまうと、慢性炎症を引き起こして、動脈硬化など様々な疾患の原因や、免疫力の低下による感染症のリスクが高くなります。

 

炎症反応を抑える方法には、2つのルートが存在すると考えられます。

1つは、不足したコルチゾールを補うために、ステロイド薬(グルココルチコイド)を投与して、緊急時の対応で乗り切る方法です。

もう1つは、甲状腺ホルモンを活性化して、ミトコンドリアのエネルギー代謝を回し、新陳代謝を促進することで、平常時のホメオスタシスを回復して、マクロファージによる炎症反応の惹起を抑制する方法です。

感染症など急性期の炎症反応と、慢性炎症では、当然その最適な対処方法が異なっていて当然だと考えられます。

 

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