「生活習慣病」という名の「未病」
古代中国の書物に「上工(じょうこう)は己病(いびょう)を治さず、未病(みびょう)を治す」という言葉があります。
最も優れた医者は、まだ病気になっていない状態の「未病」を治すというものです。
まさに予防医学を重視した言葉であると思われます。
未病と言えば、東洋医学の得意分野であるようなイメージがありますが、現代の西洋医学も未病に対するアプローチを行っています。
未病とは
東洋医学的な未病
検査をしても、具体的な病名はつかないが、なんとなく調子が悪いというような状態で、病気になる一歩手前の状態といえます。何らかの継続した自覚症状がある状態です。
例えば、頭痛、腰痛、肩こり、全身倦怠感、手足の冷え、食欲不振、むくみ、疲れ等の症状があって、病院で検査をしたけれど異常が見つからない状態です。
西洋医学では、病気には必ず器質的な変化があると考えます。人体のハード面(肉体)を緻密に追及して、病気の原因を探ることで治療をします。
一方、中医学など東洋医学では、自他覚的な症状から「証(体質や病気の原因)」を判断して、それを制御するための治法を導き出します。
検査をしても異常が認められない場合、西洋医学は対処するのが非常に苦手です。このような場合には、東洋医学的なアプローチが有効となります。
「証」を判断しての漢方薬の処方については、以下の記事をご参照ください ↓
西洋医学的な未病
西洋医学が未病を治しているのか?と思われた方も多いのではないでしょうか?
西洋医学的な未病とは、自覚症状はないが、検査では異常がある状態です。
例えば、健康診断を受けて、血圧が高い、コレステロール値が高い、血糖値(HbA1c)が高いと言われた場合です。
検査数値が基準値より高かった場合には、高血圧、高脂血症、糖尿病という病名がつけられます。いわゆる生活習慣病です。
高血圧や高コレステロール血症、糖尿病などの初期は、自覚症状がありません。
病名がつけれられてしまうので、何か病気のように思われていますが、本当はそうではありません。
本来これは未病の領域であり、動脈硬化性疾患の危険因子として、心筋梗塞や脳卒中など心血管イベントの発症を、予防する目的で治療されています。
高血圧治療については、関連記事をご参照ください ↓
2型糖尿病の治療薬については、関連記事をご参照ください ↓
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生活習慣を見直すのは簡単ではない
生活習慣病は自覚症状を伴わないために、健康診断などで検査数値の異常を指摘されて発見されることが多いです。
まずは食事や運動などの生活習慣の改善を促されて、それでも検査数値が改善しない場合には、薬物療法が開始されます。
人間というのは、やはり痛み目をみないと、なかなか自分を変えることができない生き物だと思います。
いくら動脈硬化が起こるリスクが高くなると言われても、今はなんともない状態で自らの生活習慣を見直すことは非常に難しい面があります。
日々の生活に追われて、そのような事を考える余裕さえないかもしれません。
生活習慣の改善という点からみると、薬でコントロールすることがマイナスに働いてしまうと感じます。
そうして生活習慣を振り返ることなく、日々の生活を送り続けてしまいます。
自覚症状がないというのは、非常にやっかいなものだと思います。
生活習慣を見直すヒントが、ミトコンドリアの活性化にあります。ミトコンドリアについては関連記事をご参照ください ↓
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未病を治す
生活習慣病の治療は、検査数値の異常があれば、それに対して数値をコントロールするための薬が処方されます。
血圧が高ければ降圧剤を、血糖値が高ければ血糖降下剤を、コレステロール値が高ければ抗コレステロール薬を投与します。
数値化されてわかりやすい反面、別々に対処していくため、服用する薬がどんどん増えてしまいます。
検査数値をコントロールすることが主になり、本当の目的(真のエンドポイント)が忘れ去られていきます。
本当の目的(真のエンドポイント)については、以下の記事をご参照ください ↓
やはりこのような場合でも、東洋医学的なアプローチの方が優れている面が多いと思います。
人体の体質や病気の原因を探ることができ、それに対して治法を導き出します。
血圧に対して、血糖値に対して、コレステロール値に対してなど、個別に対処する必要がありません。
導き出された治法で、すべての未病に対処できるというわけです。
自覚症状がないって本当?
自覚症状がないと思っているけど、詳しく東洋医学的な問診してみると、実はたくさんあることがわかります。
多くの人は急に変化した体の状態には気付きますが、少しずつ少しずつ数年かけて変化したような状態には、まったく気付いていません。
自覚症状がないと思っていたのは、感覚が鈍くなっているからです。
つまり自分自身と向き合っていない。
実は自分自身が、一番自分の状態に気付いていないのです。
忙しい生活の中、少しだけでも自分と向き合う時間をつくることをおすすめします。
寝転がって、大きく呼吸しながら、のびをして、自分の体を感じてみてはいかかでしょうか?
隠れていた症状に気付くかもしれません。
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まとめ
「未病を治す」
病気になってから治療するのではなく、病気ならないようにすることが非常に大切です。
未病には、「東洋医学的な未病」と「西洋医学的な未病」があります。
西洋医学の診断技術の進歩により、数値の異常が検出されて、目に見える形で未病が捉えやすくなりました。
その反面、自分自身と向き合うことをせず、生活習慣を見直すことが気薄になったと感じています。
代替マーカーのコントロールばかりに力を入れて、本当の目的を忘れてしまっています。
一番大切なことは、自分と向き合う時間をつくることです。
生活習慣病など「西洋医学的な未病」においても、東洋医学的なアプローチが優れている点がたくさんあります。